それからいくつかショップを見て回った。
颯太が頻(しき)りに、「欲しいものないですか?」と聞いてくるのがちょっと鬱陶しい。
別に欲しいものなんてない。
あったとしても、颯太に買ってもうものなんてない。
たぶん、「何か」を私にプレゼントしたいって颯太の気持ちなんだろうけど。
そんなのを受け取ったら、完璧に颯太は勘違いすると思った。
「…あ」
だから欲しいものなんてない。
そう思っていたけど、無意識に足が止まったジュエリーショップの前。
ガラスケースの中で目立つ位置に置かれていたものに目を奪われて足を止めてしまった。
「ん?ゆき乃さん?」
「……」
「もしかして、欲しいものって…」
「違う違う、これじゃない。ていうか…ここにない」
「え?どういう事ですか?」
「このアクセね、欲しかったの」
そこにあるネックレスを指さした。
颯太がジッと中を覗き込む。
「でも私が欲しいのはこの石が誕生石になってるやつで…それが限定品なの」
「限定…」
「どこにも売ってなくて。だから手に入らなんだー」
私が軽くそう言うと、颯太は更にガラスケースに近づいた。
でも…
「あ!店員来ちゃう!行こう」
店員が私達を見つけて歩いてくるのが目に入った。
買うつもりないのにロックオンされちゃう!
そう思って、颯太の腕をグイグイ引っ張ってその店を離れた。
引っ張る力からして、颯太がまだその店に留まろうとしてるのが分かった。
だから颯太が何かを言う前に…――「アイス食べたい!」そう言ったら、
「俺甘いの好きっす!」
聞いてないのに颯太の好みを知ってしまった。