予期せぬ遭遇01


【side 颯太】


腕を絡めて、そして手を繋いだままアイスクリーム屋に並んだ。

俺に寄りかかりながら店のメニューを見て「何にしよー」とゆき乃さんは目を輝かせていた。

コロコロと変わる表情に俺の心臓が反応する。


「…可愛い」

「ん?颯太、何か言った?」

「え!? いや、自分声出てました?」

「は?意味分かんないんだけど」


心の中で言ったつもりだったのに!

俺の意味不明な言動に、ゆき乃さんの眉間に皺が寄る。

焦って目を泳がせてると…――――俺を見つめる瞳に、視線が止まった。


「…颯太くん?」


俺とゆき乃さんが並んでいた二つ前。

ジッ俺を見ながら俺の名前を呼んだ女と、俺を睨むように見る男。


「…え?」

「颯太くんだよね?」


だ、誰だ!?

そう思ってその女の顔をちゃんと見て…思い出した。

学生の時に少しだけ付き合って、そして俺を振った――――元カノだ!


「颯太の知り合い?」


ゆき乃さんの声にハッとした。

俺の腕にぶら下がりながら小首を傾げて聞いてくる。

それは別に興味があるとかそんなんじゃなくて、単なる質問。

今ここで、俺が本当の事を言ったところで…きっとゆき乃さんは何も思わないと思う。

だけど――――


「あ、はい!高校の時同じクラスだった女の子で…ただの同級生っす」

「ふうん…」


ゆき乃さんの視線が元カノへと移る。

あろう事か、その元カノがゆき乃さんを見て怪訝そうな顔をした。

そしてゆき乃さんもジッと見つめ返していて。

この空気に居た堪れなくなって「あの…」とゆき乃さんに声をかけたのと同時、元カノ達が呼ばれてレジへと向かった。

やべぇ!変な汗掻いた!


「ねぇ颯太ぁ」

「えっ?」


何だかさっきより甘い声のゆき乃さん。

俺の腕にギュッと抱きつきながら、「何食べる?」と目を瞬かせて俺を上目遣いに見つめてきた。

更にスピードが上がる俺の鼓動。

一瞬で、俺の頭の中から元カノ達の存在が消え去った。

- 13 -
prev next
novel / top
ALICE+