突然顔の前に伸ばされたゆき乃さんの腕。
その手にはスプーンの上に乗せられた、チョコのアイス。
え…えぇっ!?
「ほら、あーん」
いいいい、いいの?
俺マジ…幸せすぎてちょっと泣きそうや。
開いた唇は、自分でも分かる程緊張していて…もしかしたらちょっとブルってたかもしれない。
ゆき乃さんが、俺に"あーん"してくれてる。
デートだけでも嬉しいのに、こんな幸せねぇって!
差し出されたスプーンをぱくっとくわえたら、熱くなりすぎた俺の口内の所為でアイスが一瞬で溶けた。
「美味し?」
「うん…今まで食ったアイスで一番や」
「私が食べさせたからー?」
俺の答えを分かっててそう聞いてるって分かってる。
ゆき乃さんに届いてるはずなのに、響いてない俺の想い。
どうしたら、年齢じゃなくて俺自身を見てくれます?
「そうです、当たり前やないですか」
「あははっ!やっぱりー!」
「もう一口欲しいなぁ…」
「いいけど、私にもちょうだいね!」
ずっとこの時間が続けばいいのに…――。