予期せぬ遭遇04


【side ゆき乃】


アイスを食べさせてあげると、一々照れる颯太。

こういう反応が何だか新鮮で。


「颯太のもちょうだい?」

「うん」


口を開けると、一瞬戸惑って…だけどすぐに顔を綻ばせて私の口にアイスを運んだ。

チラッと颯太の後ろに視線を移すと、颯太の知り合いの女が私達を羨むような目で見ていた。


――――女の事は、女が一番よく分かってる。

あの女がただの同級生じゃない事なんてすぐに分かった。

颯太を見る目が違う。

これは何でそう思ったか…と言うより、女の直感で。

一度でも颯太を男と意識した事がある目だなって。

颯太の慌てようからしたら十中八九そうだと思ったし、颯太が「同級生」と言った時のあの女の顔を見たら、もう間違いねぇって思った。

まぁ…元カノだろうなって。

それも、女から颯太を振ったんじゃないかって。


「美味しい!颯太がくれるからかなぁ」

「え?」

「なーんてね!」

「そうだと…嬉しいんすけどね」


口元を隠すように照れ笑いをする颯太。


「あ!」


そう言って立ち上がり颯太に顔を近づけた。

私の声と行動に驚いた颯太は呆然として私を見つめていて、離れた後も瞬きせず固まっていた。

それからすぐに、顔が赤くなっていく。


「ついてたよ、アイス」


そう言って唇に触れた人差し指を舐めたら、やっと颯太の目が動いた。

――もう、あの女はこっちを見ていない。


「…え、あっ…すすすすいません」

「颯太、もう行こうか!」


立ち上がって颯太の手を引っ張る。

去り際に颯太の元カノを見たら、悔しさを交えた視線を颯太に向けていた。

当の颯太は――――全く気づいてないみたいだけど。


「ねぇ、さっきの子さ」


颯太と手を繋ぎなら店を出た。

話題を掘り返された颯太は焦ったのか、無意識に手に力が入っていた。


「悔しそうにしてたわね」

「え?悔しい?」

「颯太のこと!逃した魚は大きかったって思ってたんじゃない?」

「……」

「元カノでしょ」

「…え!?」

「いいんじゃない?女にそう思わせられる男になったって事でしょ?」

「……」

「私…そういう男、嫌いじゃないわよ」


颯太の顔を覗き込んで笑ったら、颯太が大きく目を見開いた。

あの女と颯太の関係は、あくまで私の憶測だけど。

悔しそうに颯太と私を見てたのは間違いないから…きっと颯太がそう思わせる男になってたんだなって思った。

私と颯太がキスしてたって思っただろうな、あの女。

男と来てくるせに、昔の男にすぐに目移りするやつなんて…きっとロクな女じゃないだろうし。

ま、颯太の過去に私が兎や角言う事じゃないけどね。


「…嬉しいっす」


今日は颯太の照れ顔ばっかみてる。

まぁ会社とは全然態度が違うからだろうけど。

私も今日は…なんだかんだ言ってたくさん笑ったような気がする。


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