本気の恋01


夢のような時間も必ず終わりがある。

外に出ると空の色が変わって、同じ街でも違う顔を見せ始めていた。

ここから先は、恋人達の時間。

だから私達は――――ここで終わり。


「デートは、もう終わりよ」

「……」

「楽しかった?」

「はい…幸せ過ぎて…」


私を離すまいとしているのか、颯太の手に力が入った。

その手から颯太の想いが真っ直ぐ伝わる。


「駅まで送って」


静かに歩き出した私達。

颯太から醸し出される雰囲気の所為なのか、それとも日が沈んで顔を変えた薄明の空の所為なのか。

駅に着いた時、「家の近くまで」そう言った颯太の言葉を断れなかった。

――結局、最寄駅まで手を繋いだままだった。


「じゃあここで!」

「ゆき乃さん、俺…」


向き合ったまま、颯太が私を真っ直ぐ見つめた。

離さなきゃいけないと思ってるけど離せない――――それが形となって、颯太の手は私の指あたりを軽く掴んだまま。


「俺…ゆき乃さんの事本気です」

「……」

「今日デートして、改めてそう思いました」

「……」

「好きです、ゆき乃さん」


颯太の手に力が入る。

こうして真正面から颯太の想いを聞いたのは、初めてだった。

真剣な想いを伝えられて、嫌な気なんてしない。

だけど――――


「颯太、私は…」

「年下やからですか?」

「……」

「それだけが理由だなんて、俺…納得できひん」

「…颯太」

「こんなに好きなのに」


颯太が最後の言葉を発したのと同時、身体が少し引っ張られた。

気づいた時は、身体全体が何となく温かくて、程よい力で包み込まれていた。

颯太の腕が、私の背中に回ってる。

…意外としっかりしてんだ。

抱き締められながら、そんな事を思っていた。


「俺じゃ、ダメですか?」


絞り出したような声が耳元で聞こえる。

もうこの真っ直ぐな気持ちに、向き合わなきゃダメだって思った。

無碍(むげ)にしていいものではない。

深く息を吸い込むと、その体勢のまま――初めて、自分の気持ちを言葉にした。






「…ごめん」


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