昼食後、メイク直しをして廊下に出ると見覚えのある後ろ姿を発見した。
「なーにしてんの?」
両手をそれぞれの腕に絡ませて左右の顔を覗き込む。
二人は私の顔を見て大した驚きもせず、「よぉ」と挨拶した。
「夏輝、黎弥!このフロアに来るなんて珍しいじゃん!」
この二人は私と同期で、入社当時は同じ部署で働いていた。
今は三人ともバラバラだしフロアが全然違うからか、同期会の時しか会わなくて。
会社内でこうして三人揃う事が珍しい。
「ゆき乃に用があったけどいなかったから」
夏輝がそう言うと、「よく言うよ」と黎弥が夏輝を横目で見た。
どうやら私に用事があったのは黎弥だけで、夏輝は…「あ!ゆき乃先輩!」その声に納得。
私達の前に顔を出したハルを見て、夏輝はただ自分の彼女に会いに来ただけだと分かった。
…ま、別にいいけど。
ハルとは一度だけ一緒に仕事をした事があるだけで、同じフロアでも部署が違った。
だから夏輝の彼女として会う方が多くて、そして何故か私はハルに慕われている。
現に――――「夏輝さんズルイ!ゆき乃先輩と腕組むなんて!」腕を組む私達を見て、何故か夏輝が羨ましがられてる。
まぁこの二人は置いといて。
「用ってなに?」
黎弥に顔を向けると、「あぁ」と思い出したように話しだした。
「合同歓送迎会の事、聞いた?」
「は?なにそれ」
「なんか来週あるって。俺とゆき乃んとこの部長が栄転すんだろ?一緒にやるってさ」
「あぁ!アイツのか!そんなん今聞いたぞ」
「俺もさっき聞いてさ。不参加認めねぇし会費の徴収が明日あるらしくて」
「ふうん…」
黎弥は「ま、それだけなんだけど」と言って笑った。
それから「あ…」と言葉を続けて、「お前颯太と何かあんの?」とまさかの質問を飛ばしてきた。
むしろそっちを聞きたかったんじゃねぇかってくらい、好奇心の目を私に向ける黎弥。