届かぬ想い01


昼食後、メイク直しをして廊下に出ると見覚えのある後ろ姿を発見した。


「なーにしてんの?」


両手をそれぞれの腕に絡ませて左右の顔を覗き込む。

二人は私の顔を見て大した驚きもせず、「よぉ」と挨拶した。


「夏輝、黎弥!このフロアに来るなんて珍しいじゃん!」


この二人は私と同期で、入社当時は同じ部署で働いていた。

今は三人ともバラバラだしフロアが全然違うからか、同期会の時しか会わなくて。

会社内でこうして三人揃う事が珍しい。


「ゆき乃に用があったけどいなかったから」


夏輝がそう言うと、「よく言うよ」と黎弥が夏輝を横目で見た。

どうやら私に用事があったのは黎弥だけで、夏輝は…「あ!ゆき乃先輩!」その声に納得。

私達の前に顔を出したハルを見て、夏輝はただ自分の彼女に会いに来ただけだと分かった。

…ま、別にいいけど。

ハルとは一度だけ一緒に仕事をした事があるだけで、同じフロアでも部署が違った。

だから夏輝の彼女として会う方が多くて、そして何故か私はハルに慕われている。

現に――――「夏輝さんズルイ!ゆき乃先輩と腕組むなんて!」腕を組む私達を見て、何故か夏輝が羨ましがられてる。

まぁこの二人は置いといて。


「用ってなに?」


黎弥に顔を向けると、「あぁ」と思い出したように話しだした。


「合同歓送迎会の事、聞いた?」

「は?なにそれ」

「なんか来週あるって。俺とゆき乃んとこの部長が栄転すんだろ?一緒にやるってさ」

「あぁ!アイツのか!そんなん今聞いたぞ」

「俺もさっき聞いてさ。不参加認めねぇし会費の徴収が明日あるらしくて」

「ふうん…」


黎弥は「ま、それだけなんだけど」と言って笑った。

それから「あ…」と言葉を続けて、「お前颯太と何かあんの?」とまさかの質問を飛ばしてきた。

むしろそっちを聞きたかったんじゃねぇかってくらい、好奇心の目を私に向ける黎弥。


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