「は?なんで颯太?」
「いや…この話出たときに、すげぇテンション上がってたから」
「黎弥と同じ部署だったっけ?」
「え、今更そこ?」
「別に颯太となんて何もないけど」
「ふうん…ま、あんだけ年下ないって言い張ってたから、あいつの一方通行だろうとは思ってたけど」
その後、黎弥が何か言ってたけどあまり聞いてなかった。
歓送迎会なんて面倒くさいなぁって思って。
颯太も一緒なんだぁって思って。
そういえば颯太と初めて会ったのも合同の歓迎会だったな…なんて、呑気に黎弥の腕に抱きつきながら思い出していた。
あの時に颯太が私に惚れたって言ったっけ。
…特に理由は聞いたことないし、どっちでもいいけど。
テンション上がってたって言う颯太の姿が目に浮かんで口許が緩んだ。
「ゆき乃先輩、何か良い事あったの?」
「ない!」
夏輝の腕に抱きついたまま私を見ていたハルの質問を被せ気味に答えて、黎弥から腕を解き自分の部署へと戻った。
颯太との事は良いなんてレベルじゃないけど、気分転換程度に楽しんでいた。
それは別に颯太の気持ちを弄んでる訳じゃなくて。
自分の恋に前進も後退も出来ない状態で、私の中に入り込んできた颯太からの刺激。
私の気持ちは変わらない!って思っていても、颯太が言ってた本気とやらをほんの少しは期待してた。
それでも、私の中にいる人は…ヨシユキ先輩だけだった。
私の想いはいつでも真っ直ぐ同じ方向を見ていて、揺るいでなんていない。
――それなのに、神様は意地悪なことをする。