届かぬ想い04


私が聞き取れなかったんだと思ったヨシユキ先輩は、もう一度同じ言葉を繰り返した。

…それが、私にとって残酷な知らせであるとも知らないで。

きっとその想い人を思い出しながら言ったヨシユキ先輩の表情は、これ以上にない幸せが溢れていた。


「そ、うなんですね!」

「うん」

「ゆき乃ちゃんにはちゃんと、俺の口から報告したかったんだ」


そう言ってニコリと笑ったヨシユキ先輩。

胸がギュウっと締め付けられて、苦しい。

…笑え、私。

無意識に止まった私に、ヨシユキ先輩も歩くのをやめた。

少し視線を下に落として――


「今日は失恋記念日ですよぉ」


――そう言って勢いよくパッと顔を上げ、頬の筋肉をフルに使って笑ってみせた。

私を見ていたヨシユキ先輩の表情が、私を見て笑顔に変わる。

ずっと見てきたこの笑顔を崩したくない。

困らせたいなんて思わない。

…ヨシユキ先輩が幸せなら、それで…。


「おめでとうございます!」

「うん、ありがとう」

「もし一人に戻ったら…私が彼女になってあげましょうか?」

「あっは!そんな事にならないように頑張るよ」

「…大丈夫です、ヨシユキ先輩なら。だってヨシユキ先輩素敵ですもん!」


私の言葉に、ヨシユキ先輩の顔が更に明るくなった。

ヨシユキ先輩は笑って、「またそういう事言う〜…でも、ゆき乃ちゃんのその言葉に自信持てたんだ」そう言って私の頭をポンと軽く叩いた。

そっか…。

私の恋心は届かなかったけど、言葉はちゃんと届いてた。

だから…これでいいって思えた。

私が出した結論は、きっと間違ってなんていないって。


踏ん張るために、グッと服の袖を掴んでいた。

滲みそうになる景色に全神経を集中させて堪えていた。

ヨシユキ先輩も、エレベーターで一緒になった夏輝も、廊下で会ったなっちゃんも…いつもと変わらない。

――だから私は、ちゃんと笑えてると思う。


誰にも気づかれずに、私の気持ちは消化されていくんだって…そう思ってた。


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