ゆき乃さんの好きな人が誰か知って…ショックという気持ちよりも、ゆき乃さんの笑顔の方が気になった。
いつも胸をトキめかせてくれる俺の大好きなゆき乃さんの笑顔。
だけど今は――その笑顔が苦しい。
「ゆき乃さん、おはようございます」
追いかけるように、ゆき乃さんの部署に行っていつも通りに挨拶をした。
――ゆき乃さん大丈夫かな?
それしか考えてなかったから、
「どうしたの颯太。今日元気ないじゃん」
相変わらず夏喜さんの腕に巻き付いたままのゆき乃さんに、俺の方が変だと言われてしまった。
昨日と変わらないこの光景。
まるで何もなかったかのような…そう思わせるゆき乃さんの態度。
夏喜さんは、知ってるんだろうか?
ジッと夏喜さんを見ていたら、「何だよ」と怪訝な顔をされたから慌てて視線を逸らした。
「颯太がなっちゃんに喧嘩売ってる〜」
そう言ってゆき乃さんが笑った。
ゆき乃さんの声も笑顔も…俺には悲鳴のようなSOSにしか映らない。
きっと、夏喜さんにも頼るつもりないんだって。
そう思ったら余計に胸が苦しくなった。
その日も、その次の日も。
何度か様子を見にゆき乃さんの部署へと足を運んだ。
いつも以上に来る俺を見て、ゆき乃さんは「さぼるなよ!」と笑ってた。
端から見たらゆき乃さんは悲しい程いつも通りで、テキパキと仕事をこなしていた。
いつも素直に気持ちを伝えるゆき乃さん。
裏表のない言葉や態度が魅力のゆき乃さん。
どうして誰にも、何も言わないんだよ。
本気だったんでしょ?
このまま、何もなかった事にして一人で抱えるつもりなの?