ウソの笑顔02


ゆき乃さんの好きな人が誰か知って…ショックという気持ちよりも、ゆき乃さんの笑顔の方が気になった。

いつも胸をトキめかせてくれる俺の大好きなゆき乃さんの笑顔。

だけど今は――その笑顔が苦しい。


「ゆき乃さん、おはようございます」


追いかけるように、ゆき乃さんの部署に行っていつも通りに挨拶をした。

――ゆき乃さん大丈夫かな?

それしか考えてなかったから、


「どうしたの颯太。今日元気ないじゃん」


相変わらず夏喜さんの腕に巻き付いたままのゆき乃さんに、俺の方が変だと言われてしまった。

昨日と変わらないこの光景。

まるで何もなかったかのような…そう思わせるゆき乃さんの態度。

夏喜さんは、知ってるんだろうか?

ジッと夏喜さんを見ていたら、「何だよ」と怪訝な顔をされたから慌てて視線を逸らした。


「颯太がなっちゃんに喧嘩売ってる〜」


そう言ってゆき乃さんが笑った。

ゆき乃さんの声も笑顔も…俺には悲鳴のようなSOSにしか映らない。

きっと、夏喜さんにも頼るつもりないんだって。

そう思ったら余計に胸が苦しくなった。




その日も、その次の日も。

何度か様子を見にゆき乃さんの部署へと足を運んだ。

いつも以上に来る俺を見て、ゆき乃さんは「さぼるなよ!」と笑ってた。

端から見たらゆき乃さんは悲しい程いつも通りで、テキパキと仕事をこなしていた。

いつも素直に気持ちを伝えるゆき乃さん。

裏表のない言葉や態度が魅力のゆき乃さん。


どうして誰にも、何も言わないんだよ。

本気だったんでしょ?

このまま、何もなかった事にして一人で抱えるつもりなの?


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