ウソの笑顔03


【side ゆき乃】


午後のマストの仕事を終えて、「休憩いってきまーす」とフロアを出た。

無意識に溜め息が漏れる。

ずっと仕事をしていたら余計な事も考えなくて済む。

だけどずっと全神経を駆使して、考えないようにするのは…凄く凄く疲れた。


「フゥ…」


ダメだ。

仕事から離れると、一人になると…考えてしまうのはヨシユキ先輩の事。

「ヨシユキ先輩」って心の中で思っただけでも、鼻の奥がツンとして目頭が熱くなる。

失恋は過去にも経験している。

だけど、こうして予期せぬタイミングで、何の心構えも出来ていない状態での失恋は…結構ダメージが強い気がした。

誰にも言えなかった想い。

ヨシユキ先輩本人でさえ、私の気持ちは知らない。

なっちゃんは知ってるんじゃないかと思ってるけど、それは本人から何かを言われたわけじゃないから分からない。

それに知っていたとしても、縋りたいとは思えなかった。

誰も知らない私の想いは…きっと私一人で消化しなきゃいけない。

今まで通りを望むなら、私が今まで通りの私でいなきゃダメだって。

グッと唇を噛んで目を閉じ、涙が引くのを待った。


「…戻ろ」


休憩室を出て、フロアに戻ろうと廊下を歩く。

気分転換にジュースでも買おう。

そう思って少し寄り道をしようとしたら――


「ゆき乃さん、ちょっと」


――このフロアにいないはずの颯太が、私の手首を掴んで引っ張った。

いきなり現れたから心臓が飛び出るかと思った。

突然の事で、何も言葉が出てこなくて。

そして何より…真剣な顔して私を連れ出す颯太に、私はただついて行くしかなかった。

私を引っ張る大きな背中を、ただ呆然と見つめていた。


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