そんな私に追い打ちをかけるように、颯太が言葉を続けた。
「ゆき乃さん…夏喜さんにも頼ってないんでしょ?いつも通り仕事して、何事もなかったかのようにして…。それって端から見たら格好ええんかもしれへんけど、俺はそうは思わへん」
「……」
「俺の前では、格好悪いゆき乃さんも見せてよ」
「……」
「ゆき乃さんの事は、俺が全力で守るから。誰にも弱い所見せたくないって言うなら俺が盾になって隠すから。だから俺には…ゆき乃さんの全部を見せてよ」
「……っ…」
込み上げる感情を、これ以上抑えられなかった。
涙を塞き止めていた最後のプライドという栓を、颯太が壊した。
ポロポロと頬を伝う涙は悲しい涙のはずなのに…その涙も心も、少しだけ温かいって思った。
「ゆき乃さん、俺の胸で泣いてええよ。そんなヤワじゃないから」
そう言って私の腕を引っ張って抱きとめる颯太。
頬に当たる颯太の胸板は、見た目とは違って意外としっかりとしていて…私の全部を受け止めてくれるみたい。
私の涙でスーツが濡れる事も気にせずに、颯太は私を抱きしめた。
後頭部に手を添えて、優しく優しく、梳かすように頭を撫でる。
「…颯太の、くせに」
「え?」
「…颯太のくせに、かっこいいじゃん…っ」
泣きながらの文句なんて何の効力もない。
実際に…私は颯太の胸で、颯太の胸元の襟を掴みながら声を出して泣いた。
こんな風に泣くつもりはなかったけど、颯太ならどんな姿を見せたって、私を受け止めてくれるんじゃないかって…そう思った。
私を好きだと言っていた颯太。
何度あしらっても想いをぶつけてきた颯太。
その時、自分の想いと少しだけリンクする部分があった。
だからその想いの大きさも、そして想い続ける辛さも分かってる。
もしかしたら、私が颯太に縋るのは間違ってるのかもしれない。
一番甘えちゃいけない相手なのかもしれない。
私を好きだという颯太の前で、他の男の事で泣くのは颯太を傷つける事になってるのかもしれない。
だけど――――颯太はそれを全部分かった上で、「泣いていいよ」って言ってくれたような気がした。