失恋して、こうして誰かに縋り付いて涙を流したのは初めてかもしれない。
そんな事を考えられるまで私の嗚咽も涙も落ち着き始めていた。
どれくらい颯太に抱きついていたんだろう。
四方を壁に囲まれたこの場所は、時間の経過が分かるものが何もなくて。
この状況を客観的に見られるようになっても…私はまだ颯太から離れなかった。
颯太も、私の背中に回した腕を解かない。
温かい空気が私と颯太を包み込んでる――。
「私ね、振られたの…好きな人に」
誰かの温もりに触れてる安心感からか、それとも泣いて少しはスッキリしたんだろうか。
颯太に聞かれてないけど、私は自分の事を颯太に話し始めた。
普段、私はわりと思ってる事を口に出して言える人間で。
それは端から見たら、裏表なく正直で真っ直ぐな性格だって見えると思う。
そこに間違いはないけれど…――本当は自分自身の事を他人に言うのは苦手だったりする。
特に、自分の心の傷は。
だけど…自然と口から零れた。
颯太なら真剣に聞いてくれると思ったし、それに…私が聞いて欲しいと思ったからかもしれない。
「本気で好きって、そう伝える前に終わっちゃったの…。気持ちを伝えなかった事に後悔はしてないけど、それでもやっぱり…私の気持ち、知ってもらいたかったって思いもあって」
「……」
「その人なら、私を守ってくれるって…」
「…うん」
「男に守ってほしいって思うようになったのは過去の恋愛があったからで。過去に年下とも付き合ったことあったのよ?だけど…やっぱりダメだった。私、独占欲強いし我が儘だし…最初はみんな言うの、『大丈夫!それでも好きだ』って。だけどやっぱり最初だけで、それが理由で別れることになって…誰もついてきてくれなかった」
「……」
「それで、年下とは付き合わないって決めたの」
ギュッと、抱きしめる腕が強くなった。
颯太の気持ちは嬉しいし、こうして「私を守る」と言ってくれた事もちゃんと私の心に響いてる。
だからこうして涙を流せた。
だけど――――自分の傷と向き合ったら、やっぱり「またそうなるんじゃないか」って防衛本能が働いてしまう。
颯太が信じられないわけじゃないけど、信じられる程…颯太を好きなのかどうかも分からない。
心を許した事と恋心は簡単に結び付けられないと思う。
「だから…」
そう言葉を続けて少し颯太の胸板を押して身体を離した。
颯太の腕の力が少し緩んで、颯太の手が私の肩へと移る。
顔を上げた先には、私を真っ直ぐに見下ろす颯太がいて…その瞳はやっぱり熱かった。