ヨシユキ先輩にとって、私の告白は挨拶みたいなものらしい。
本人がそう言ってた訳じゃないけど、本気にされていないって事はヨシユキ先輩の返答から分かってしまう。
好きって気持ちを抑えられない私はすぐにその想いを言葉にしちゃうタイプで、最初にその言葉を口にしたのは…たぶん飲み会の席だった気がする。
その所為か、どうやらヨシユキ先輩には冗談に取られてしまった。
だけど私はいつでも本気だった。
ヨシユキ先輩が冗談として受け取るから、私の口調もそうなってるだけ。
どうして本気だと言えないのか――――それは、ヨシユキ先輩の熱視線は別の人に向けられてるから。
それを知っても諦めるなんて選択肢は私にはなくて。
いつか私を見てくれる!って…そう思って日々アタック中。
だけど今のこの関係が崩れるのが怖くて、アタックしてはいるけど「本気」を伝えられないでいた。
「じゃ、ゆき乃ちゃんまたね」
「はい!」
ポンッと頭に手を置いて「頑張って」と笑ったヨシユキ先輩を見送り、自分の部署へ向かった。
はぁ、朝からポンポンされちゃった。
今日はいつもより仕事頑張れちゃうかも!
若干スキップ踏んでルンルンで廊下を歩いていると――
「ゆき乃さん!」
――その幸せ気分を邪魔する声が背後から聞こえてきた。
何となく、時間的に分かってた。
そろそろくんじゃないかって身構えてた。
だけど…私はその声を無視してスタスタと歩く。
「えぇ!? ゆき乃さーん!」
さっきより声が近い。
小走りする足音まで聞こえて…私がその場でピタッと急に立ち止まると、「うおっ!」と勢い余ったのか目の前でつんのめっていた。
無駄に良い運動神経を発揮して体勢を整えると、私の前に立ってニコリと微笑む。