「ゆき乃さん、俺とデートしてください!」
この二日間少し大人しかった颯太の、出勤後の開口一番の言葉がこれだった。
私の事やっと諦めたか…。
そう思っていたのに、この静けさはどうやら颯太のアプローチが次の段階へ入る前触れだったらしい。
もしかして、あの言葉本気にしてないよね?
「何?そんなに私とエッチしたいの?」
「ち、ちゃいます!ちゃいます!…厳密に言えば違わないけど、そうじゃないっす」
顔を赤くして焦る颯太に、ちょっと笑っちゃう。
そんな必死にならなくてもいいのにって。
「明日もし予定なければ…映画とかどうかなって」
「……」
「俺、ゆき乃さんの事諦めてませんから!だけどこのままじゃ無理って言うのも分かってます。それでも…ゆき乃さんとデートしたいっす」
こんな風に真っ直ぐ気持ちを伝える颯太に、少し感心した。
突き放しても、いつも本気を伝えてくる颯太。
年下とは絶対に嫌だし付き合うなんて無理だけど…この気持ち自体を否定するのは違うんじゃないかって。
「ダメっすか?」
「…明日予定ある」
「…そうですか」
「明後日ならいいわよ」
「え!?」
絵に描いたようにパァッと明るくなった颯太の表情。
告白をオッケーした訳じゃないのに、そんなに嬉しいものか?
…もしヨシユキ先輩とデート出来たら。
そう思ったら、こんな顔になるのも無理ないかなって思った。
「いいいいいいの!? ホンマに?」
「嫌なの?ていうか颯太が誘ったんじゃない。それとも遊びだった?」
「本気っす!」
「暇だしいいよ〜」
手をヒラヒラと振って部署に戻る。
後ろで「ヨッシャー!」という雄叫びが聞こえてきて、何だかこっちまで恥ずかしくなった。
見なくても分かる…絶対、ガッツポーズしてるって。
暇だからって言ったの聞いてたかなぁ。
その後、内線で自分の携帯番号を伝えてきた颯太。
登録って言うよりメモるのすら面倒だから、自分の番号を伝えて「そっちから連絡して」と切った。
私の態度にめげる事ない颯太は、休憩中に私の携帯に電話をしてきた。
――颯太だって分かってたから、出なかったけど。