年下のオトコ03


「ゆき乃さん、俺とデートしてください!」


この二日間少し大人しかった颯太の、出勤後の開口一番の言葉がこれだった。

私の事やっと諦めたか…。

そう思っていたのに、この静けさはどうやら颯太のアプローチが次の段階へ入る前触れだったらしい。

もしかして、あの言葉本気にしてないよね?


「何?そんなに私とエッチしたいの?」

「ち、ちゃいます!ちゃいます!…厳密に言えば違わないけど、そうじゃないっす」


顔を赤くして焦る颯太に、ちょっと笑っちゃう。

そんな必死にならなくてもいいのにって。


「明日もし予定なければ…映画とかどうかなって」

「……」

「俺、ゆき乃さんの事諦めてませんから!だけどこのままじゃ無理って言うのも分かってます。それでも…ゆき乃さんとデートしたいっす」


こんな風に真っ直ぐ気持ちを伝える颯太に、少し感心した。

突き放しても、いつも本気を伝えてくる颯太。

年下とは絶対に嫌だし付き合うなんて無理だけど…この気持ち自体を否定するのは違うんじゃないかって。


「ダメっすか?」

「…明日予定ある」

「…そうですか」

「明後日ならいいわよ」

「え!?」


絵に描いたようにパァッと明るくなった颯太の表情。

告白をオッケーした訳じゃないのに、そんなに嬉しいものか?

…もしヨシユキ先輩とデート出来たら。

そう思ったら、こんな顔になるのも無理ないかなって思った。


「いいいいいいの!? ホンマに?」

「嫌なの?ていうか颯太が誘ったんじゃない。それとも遊びだった?」

「本気っす!」

「暇だしいいよ〜」


手をヒラヒラと振って部署に戻る。

後ろで「ヨッシャー!」という雄叫びが聞こえてきて、何だかこっちまで恥ずかしくなった。

見なくても分かる…絶対、ガッツポーズしてるって。

暇だからって言ったの聞いてたかなぁ。


その後、内線で自分の携帯番号を伝えてきた颯太。

登録って言うよりメモるのすら面倒だから、自分の番号を伝えて「そっちから連絡して」と切った。

私の態度にめげる事ない颯太は、休憩中に私の携帯に電話をしてきた。

――颯太だって分かってたから、出なかったけど。

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