勇征と出逢ったのは、一年の秋。
五十嵐教授のゼミで偶然隣になったんだ。
私が転がした消しゴムを拾ってくれたのが勇征で、何回か顔を合わせる内に喋るようになって。
今では、大学にいる時はほとんど一緒にいる。
「そういや、今日の帰りに夏喜から集合かかってる」
「集合?」
「ん〜来月から休みじゃん?前に何かしようかって言ってたんだよねぇ」
なっちゃんは、勇征の高校時代からの親友で、私も一緒に遊ぶうちに仲良くなって。
そこで知り合ったメンバーで何度か遊びに行ったりしていて、大学内でも私たちのグループはわりと有名だった。
なんて言ったって…なっちゃんは顔がいい。
年上年下関係なくモテる。
本人は黄色い声に慣れてるのか、あまり外野の声は気にしてないみたいだけど。
そんななっちゃんからの集合に、ワクワクした気持ちを抑えられない。
だって…夏はイベントが多い!
「どっか行くのかなぁ?」
「うん、たぶん…ゆき乃はどこ行きたい?」
「え〜!夏祭りとかも行きたいし花火も…あっ!海とか!みんなで行きたい!ゆせくんは?」
「俺はねぇ」
言葉の合間に自分用に買ってきたミルクティーをストローで吸い上げると、また私の目をジッと見つめて、
「ゆき乃と一緒ならどこでもいいなぁ俺」
ドキンとする言葉をくれる。
勇征にとって、これがどこまで意味するものかは私には分からない。
私の気持ちを知ってるのかどうかも分からない。
聞きたい事や思いは結構声に出して聞いたりできる方だけど…肝心なことは聞けないでいる。
だから、友達以上恋人未満なんだろうけど。
でも勇征がほかの誰よりも私を特別に扱ってくれているのは感じてて、何よりそれが私にとって大事で嬉しい事だから――
「私も、ゆせと一緒ならどこでもいい!」
素直な気持ちを伝えたいって思う。
それに…ほら。
「可愛いこと言うなよ〜ゆき乃」
私が素直だと、勇征だって嬉しそうに笑うから。
鼻をクシャッとして笑う勇征が、私の頭を撫でるように触れる。
勇征の笑顔もこの手も、本当は独り占めしたいけど…恋人っていう形になってなくても、勇征は私に与えてくれるから、私もこの関係を崩せないでいるのかもしれない。
どこまでが友達で、どこからが恋人なのか。
友達ならどこまでが許されて、恋人じゃなきゃしてはダメなことは何なのか。
曖昧だけど確実にある私と勇征の間にある線は、いつか取れる時がくるのかな?