午後の講義を半分寝ながらやり過ごした。
眠たくなるのは講義がつまらないからじゃない。
私の右側がぽわんと温かいからだと思う。
勇征の体温が高いからなのか、私の体温が上がってるからなのか分からないけど…勇征と一緒の時はいつも眠たくなる。
“ゆせくん、眠たぁい”
ノートの端っこに落書きした。
私が右を向けば、すぐに勇征の視線と絡み合う。
勇征の瞳はいつだって優しくて、温かい。
心地よい温度にトクトクという心音が加わって、今が講義中だなんて忘れちゃうくらいまったりと幸せな空気に包まれる。
“ゆき乃が眠いのはいつもの事だろ〜”
“そんな事ないよ”
“俺、ゆき乃の寝顔書けるよ?”
ノートの端で文字だけの会話をした後、ニヤニヤと笑いながら勇征がサラっと書いたのは、たぶんだけど…人の顔。
ゆき乃の寝顔、って言ったよね?
全然分からないんだけど!
あまりにも下手すぎる絵に、似てない事よりも笑いが込み上げてくる。
だけどそれを堪えて、「私こんな顔してる?」としょぼんとした顔で小さく勇征にだけ聞こえるように言ったら、勇征がちょっと焦った顔した。
「ごめんごめん、ゆき乃の寝顔は天使なんだけど…俺の絵心が」
「……」
「スネちゃった?」
声を落とし少し距離を詰めた勇征が、スッと机の下で私の手を掴んで握り締めた。
途端に、温かかったものが熱くなる。
ムウっと唇を突き出してたのに、それすら緩みそうで…勇征が私の視界に入ろうと顔を覗き込むから私と勇征の距離はグッと近くなった。
「摘んでいい?その可愛い唇」
この距離で、しかも講義中にそんなこと言うから私の顔は限界で…一気に顔の筋肉が緩んだ。
それを見てふにゃっと笑う勇征。
「寝顔見せていいの俺だけだぞ〜?」
まるで彼氏にでも言われてるのかって錯覚しそうな台詞を言って、私のほっぺをプニプニ触ると姿勢を戻した。
手は、繋がれたまま。
私ノート書けないじゃん…なんて思ったのは少しだけで、真っ直ぐボードを見つめる勇征の横顔を見つめながらウトウトしていた。
友達であっても恋人であっても、幸せを感じる温もりに違いはないんじゃないかって。
勇征は、繋いだ手にどんな意味を込めているんだろう――――。