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1ゲーム終えて、香織も少し慣れてきたらしい。
彼女はコツを掴むのが早く、切原が加減しなくともお互い楽しめるくらいには上達していた。
「ねえ。」
ボールを抱えてレーンの前に立った香織が振り返る。
その動きにつられて、ストレートの髪がふわりと揺れた。
「次のゲーム、何か賭けて勝負しない?」
「賭けるって、何を?」
「そうね…。
私が勝ったら、駅前のパフェを奢って。」
「げ、あそこ高いじゃんよ…。」
香織の言うパフェは、駅前にあるお洒落なカフェの看板メニューだ。
季節のフルーツが盛り沢山で、中学生の財布には少し痛い値段だった。
最近女子の間では、その店のパフェを食べるのがちょっとしたステータスのようになっている。
「てか、新宮ってそういうの知ってんだな。」
「クラスの女の子達が話してたのを聞いてね。
切原は何を賭けるの?」
「そうだな、俺は…。」
切原は少し考えて、良いことを思いついた。
「…よし。
じゃあ俺も、俺が行きたいとこに付き合ってもらうことにするぜ。」
「行きたい所って、どこに?」
「新宮が勝ったらおしえてやるよ。」
香織は訝しげに切原を見た。
「…なんかとんでもない場所とかじゃないでしょうね。」
「だーいじょうぶだって。
よっしゃ、負けらんねえな!」
「私だって負けないわ。パフェは頂くわよ。」
二人ともこういうシチュエーションに俄然燃えるタイプなので、生き生きしている。
こうして、急遽ボウリング対決が始まったのだった。