18

切原は真田と幸村を真似て浴衣に袖を通した。

「それにしても、赤也もやるね。

まさか俺たちよりも先に香織を誘ってるとは思わなかったよ。」

左右の前を逆に重ねる切原に、幸村は自分の浴衣を指さしながら言った。

「賭けに勝ったんでね。

それがなくても、誘おうとは思ってたんスけど。」

それを見て左右の重ねを直すと、今度は内側がきちんと奥まで入っていなくて裾がズレる。

真田は早々に着終わると、切原が浴衣に絡まっているのを見てため息をついた。

切原の後ろに回り、背の真ん中と浴衣の中心を合わせてやる。

「香織が応じたのも意外だったがな。

何だかんだで、お前には気を許しているらしい。」

真田は切原に端折りを持っているよう指示した。

「似たもの同士だもんね。」

幸村もいつのまにか着終わっていた。

「そうっスか?

あいつは俺と違って、育ちの良いお嬢様って感じに見えるッスけど。」

結局は両腕を開いて真田に着付けてもらいながら、切原は首を傾げた。

幸村と真田は互いに顔を見合わせて笑っただけで、切原の質問には答えてくれなかった。

「てか、前から気になってたんスけど…。

新宮って、副部長のこと好きなんじゃないッスか?

いっつも兄様兄様って。」

「だったらどうするの?勝負でもするのかい?」

幸村は何故かうきうきした声で言う。

真田は切原の腰に帯を当て長さを調整していた。

「煽るな、精市。

…そうだな、俺たちは家族同然で育ってきたから…。

あの感じはいつものことだが。」

「んじゃ、少なくとも副部長はそういう気はないってことッスよね?」

「ああ。香織は妹のようなものだ。」

「よかった〜。」

ほっと切原の表情が緩んだ。

真田が貝の口を結び終えたので、鏡の前に立ってみる。

和服が似合う真田ほどではないが、綺麗に着せてもらったからか我ながら見栄えが良い。

幸村はぽんと切原の肩を叩いた。

「まあどちらにせよ、当たって砕けた時は教えてくれ。」

「砕ける前提ッスか…。」

はあ、と切原は項垂れた。




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