「…そう。残念だったわね。」
香織は真田からの電話でテニス部の全国大会の結果を知った。
準優勝でも十分立派なことだが、大会三連覇を目標としていた彼らにとっては辛い結果だろう。
「…。」
「…精市でも、負けることってあるのね。」
少しの沈黙のあと、香織はぽつりとそう言った。
「ああ。」
3年である真田と幸村は今回の大会を最後に部を引退している。
電話越しの真田の声はいつもと変わらないようで、でも少し覇気がないような気もした。
「俺たちは自分のした試合に悔いはない。
だが…。赤也が相当ショックを受けたようでな。」
「そう、でしょうね。」
プライドが高く、テニス一筋だった切原には受け入れ難いことだろうことは容易に想像できた。
「赤也は毎日、一人でひたすら練習をしている。
鍛錬は重要だが…炎天下で水も休憩も摂らずに練習しているのは流石に無鉄砲だ。
お前からも、少し言ってやってくれないか。」
「…わかったわ。」
大会が終わってから、切原とのメッセージのやり取りは途絶えていた。
何となく状況を察していた香織は、かける言葉を見つけられずそのままにしていたのだった。
「兄様も、切原のことが心配なのね。」
「…あいつはこれからの立海を引っ張っていく男だ。
いつまでも落ち込んでいられては困る。」
肯定こそしなかったが、彼の面倒見の良さは昔から良く知っていた。
「今度時間が空いたら、会いに行ってみるわ。」
「ああ、頼んだぞ。」
香織は電話を置き、ため息をついた。
やることはたくさんあるのに、彼を放っておけなくなっている自分に気がつく。
(誰かのこと、こんなに気にかかることなんてなかったのに。)