保健室のベッドに切原を寝かせると、幸村は水分を買いに出た。
保健室の先生は軽い脱水症状だろうと言っていた。
香織はベッドの横の椅子に座り、スマホを見る。
時間通りに帰れないことを母に連絡すると、「分かりました」とだけメッセージが来ていた。
文面では特に取り乱した様子はないが、きっと驚いたことだろう。
帰ったら色々聞かれそうだ。
「…もしかして、何か用事だったか?」
「ええ。でも、良いわ。
今は切原がこれ以上無理しないように見張ってる方が大事だし。」
「わかったわかった。もうしねえって。」
幸村がスポーツドリンクを2本とカルピスを1本持って戻ってきた。
幸村はスポーツドリンクを切原に、カルピスは香織に差し出した。
「あら、私に?」
「香織も鞄を運んでくれたからね。」
「いいのに。ありがとう。」
切原はスポーツドリンクを一気に一本飲み干すと、疲れが出たのかうとうとし始めた。
それを見て少し安堵した香織は、幸村に尋ねる。
「ねえ。本当は精市も、切原が心配だからあそこにいたんでしょ?」
幸村が世話をしていた花壇からは、テニスコートの様子がよく見える。
多分、切原の身に何かあったらすぐわかるように、必要以上にそこに通っていたのだろう。
「さあ、どうかな。
そういえば、季節の変わり目だしよく手入れをしに行ってたかもね。」
幸村は微笑んでそう言った。
「今日は習い事は良いのかい。」
「母に連絡を入れたわ。今日は行けないって。」
幸村はそれがどれほど特別なことかよく知っていたので一瞬驚いた顔をしたが、追及してはこなかった。
「そうか。
…じゃあ、あとは頼もうかな。
起きたらもう一本も飲むように言っておいてくれ。」
幸村は切原を起こさないように、静かに立ち上がった。
「ええ。」
香織は幸村を見送り、穏やかに眠る切原の横で座って彼が目覚めるのを待った。