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ラケットとボールがぶつかる快音が響く。

切原のサーブは、バウンドした瞬間に真琴の身体に向かって跳ね上がって来た。

(すごいパワー…。でも、受け切れる。)

ふわりと弧を描くロブを返した真琴は、再び構え直した。

今度は強烈なシュートが放たれる。

全体的に、体の正面に向かってくる打球が多い。

瞬時に体勢を整えると、真琴はそれをコートの角へ正確に打ち返した。

「あークソ!調子に乗んなよ!」

いつのまにか、切原は完全に真琴のペースに翻弄されていた。

荒々しい返球が多い切原に対し、真琴は勢いを殺して受け流している。

品のある所作でありながらも、的確な場面で決め球を外さない真琴と、徐々に追い詰められ余裕のない切原。

試合を見ている部員達には、真琴が得点的に勝っている上に、かなり余力を残した試合運びをしているように見えていた。

「ほう…。赤也がここまでやられるとは。

お前さんの心配など、余計なお世話だったようじゃな。」

仁王は顎に手を当て、興味深そうに試合を見ていた。

ジャッカルも同意する。

「そうみたいだな。

赤也相手にここまでやれる女子がいるなんて思わなかったぜ。

…まあ、幸村が連れてきたって言うんだから、ただ者じゃないだろうとは思ってたけど。」

隣にいる丸井はいつものようにガムを膨らませ気楽に構えているが、試合から一切目を逸らしていない。

「やるねぇ。

本当のレギュラーとして大会に出られねぇのが勿体ないくらいの強さだな。」

柳生も腕組みをしながら頷いた。

「ええ、本当に。

それにしても幸村くんも意地が悪いですね。

始めからそう言ってくれれば良いものを。」

柳生の言葉に、幸村は悪戯っぽく笑ってみせた。

「その方が盛り上がるかなって思ったんだ。

それに、実際に見た方が早いだろう?」

「それはそうかも知れませんね。

事実、部員全員を一度に納得させてしまいましたから。」

幸村の狙い通り、この場に会した部員全員が、真琴の実力が十分であることの証人になった。

完敗した切原はラケットでネットを叩きつけ、真琴に詰め寄った。

「アンタが強いのは認める…。

けど、次はぜってー勝つからな!」

真琴は右手を差し出した。

「うん。また試合してね。」

切原もしぶしぶその手を取って、握手を交わした。

「あー、あと、その…。」

切原は目を逸らし、気まずそうに頭を掻いた。

「…名前、もっかい教えて。」

真琴は急にしおれたような切原が可笑しくて、ふっと肩の力が抜けた。

「天澤真琴。切原くん、改めてよろしくね。」

「ああ。それにしても、ここまでやるなんて思ってなかったぜ。

さすがは部長の…。」

切原がそこから先を飲み込んだのは、幸村がすごいプレッシャーを放ちながら近づいてきたからだ。

恐怖を覚え黙った切原をよそに、幸村は真琴に微笑みかけた。

自身の肩に掛けていたジャージの上着を、ふわりと彼女に羽織らせる。

「真琴、おつかれさま。

さあ、みんな。ちょっと遅くなったけど練習を始めようか。」

幸村がてきぱきと指示を出す中、切原は1人納得していた。

(成程、まだそういう感じね。

部長も案外奥手なんだな〜。)

切原はにやにやしながら、幸村と真琴が話す様子を遠目に見ていた。