幸村は真琴の家の前に到着し、インターホンを鳴らした。
(この門の下に入ったテニスボールが始まりだったな…。)
幸村は幼い頃を思い出し、一人微笑んだ。
暫くして庭の奥から真琴が現れた。
制服とは違う、ふわりと揺れるシフォンのロングスカートが幸村の目を奪う。
髪はハーフアップに纏められ、三つ編みのアレンジが施されていた。
「精市くん、お待たせ。」
固まっている幸村をよそに、真琴はうきうきと弾んでいる。
(これは夢なのか…?)
幸村の頭には「天使」という言葉が浮かんでいた。
「精市くん。」
真琴に声をかけられ、はっと我に返る。
あまりの衝撃に呆気に取られていた時間は、実際はほんの数秒だったようだ。
「ごめん、あんまり可愛らしいから吃驚して。」
幸村は心中穏やかでないのを全力で取り繕って、言葉だけは本当のことを伝えた。
「もう、からかってるの?
まあ、いいや。行こうか。」
機嫌良く歩き出した真琴と並んで、幸村も歩き出した。
デートはまだ始まったばかりなのに、すでに緩みきってしまいそうな表情をなんとか自然に振る舞う。
(今日一日、冷静でいられるだろうか…。)
幸村は一抹の不安を覚えたのだった。