「あれ、お前らは…。」
コートに着くと、別の学校の男子生徒達がすでに使用中だった。
真琴は知らない学校のジャージだったが、他の3人は面識があるようだった。
黒髪の活発そうな男子生徒が明るく笑う。
「立海の皆さんじゃないッスか。奇遇ッスね!」
相手をしていた癖っ毛の男子生徒もこちらに気づいた。
「ほんとだにゃ。そか、この辺近いんだっけ?」
「あの、この方達は…。」
真琴はジャッカルの方を見た。
「そうか、天澤は初対面だよな。青春学園っていう強豪校のテニス部員だ。
あっちが桃城で、もう一人が菊丸。」
菊丸はぴょんと飛び跳ねて、真琴の方へ来た。
小柄なのもあってか、かなり身軽なようだ。
「可愛い子連れてるじゃん。俺は菊丸英二。
君の名前は?」
「立海大2年の天澤真琴です。」
「真琴ちゃんね。よろしく〜。」
「2年だったら、俺と同学年だな。
ラケット持ってるってことは、アンタもテニスするのか?」
桃城の問いに、何故か切原が得意げに応える。
「ああ、天澤は強いぜ。なんたって…。」
「赤也は負けっぱなしだもんな。」
丸井がすかさず口を挟んだ。
「それは今日挽回すんの!てか言わないで下さいよ〜。」
切原が怒る様子をみて、丸井はけらけらと笑っている。
2人のやりとりが可笑しくて、真琴もつい頬が緩んだ。
桃城がネット越しに身を乗り出す。
「フーン。女子に負けてるようじゃ、天下の立海も敵じゃなさそうッスね。」
「んだと?もっぺん言ってみろよ。」
喧嘩っ早い切原が食ってかかろうとするのを、ジャッカルが慌てて抑える。
丸井は頭の後ろで腕を組み、冷静に赤也を嗜めた。
「赤也、やめろ。こんなとこで問題起こしたら洒落になんねーぞ。」
「もしかして、立海は去年の3年が抜けてもうメンバーが残ってないのかにゃ?
去年の優勝校って言っても、落ちたもんだね。」
にゃはは、と意地悪く笑う菊丸に、丸井は違和感を覚えた。
(こいつら、こんな奴らだったか…?
無駄に煽ってきやがって。ヤな感じだな。)
何も言わず黙っている丸井達に、2人は続ける。
「言い返さないってことはそういうことッスよね。
…まあでもせっかく立海のD1が揃ってるし、手合わせしましょうよ。
準備運動くらいにはなってくれますよね?」
桃城はへらへらと笑った。
大会では敵同士ではあるものの、何かいつも以上に気に入らなかった。
「…いーねぇ。完膚なきまでに叩きのめしてやるよ。
なあ、ジャッカル。」
「ああ。」
「俺にやらせて下さいよ!あいつら、馬鹿にしやがって…!」
切原がいきり立つのを、ジャッカルが軽く頭を小突いて制止した。
「お前はちょっと頭冷やせ。
相手に怪我でもさせたら大事だぞ。
天澤、審判をやってくれ。」
真琴は頷いた。
「お2人とも、大丈夫ですか?」
相手の只ならぬ雰囲気に、真琴は2人の身を案じていた。
「心配すんなって。俺とジャッカルが、あんな奴らに負けると思うのか?」
丸井はにっと笑った。ジャッカルも頷く。
それぞれがコートに入り、真琴の合図で試合が始まった。