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「つっ……!」

すでにラケットを仕舞っていた丸井は、右腕にモロに打球を受けてしまった。

真琴が小さく悲鳴をあげる。

「丸井先輩っ!」

真琴と切原はすぐに丸井に駆け寄った。

丸井は右腕を押さえて蹲っていた。

(よりによって利き腕に…!!)

真琴はふつふつと怒りが込み上げてくるのを感じた。

ジャッカルがすかさず持っていた冷却スプレーを取り出し、打撲箇所に吹きつける。

「て、てめぇ…。」

痛みで言葉にならない丸井の代わりに、すぐさま立ち上がったのは真琴だった。

つかつかと桃城と菊丸の前まで歩み寄り立ち止まると、真っ直ぐに2人を見据える。

真琴は今ほど、怒りで我を忘れたことはなかった。

「な、なんだよ。お前には関係ないだろ。」

「関係あります。丸井先輩は私がマネージャーを務めるテニス部の選手です。」

真琴の気迫に、菊丸と桃城がたじろぐ。

彼女は普段の様子からは想像出来ないほど冷たい目をしていた。

「貴方のしたことは、丸井先輩だけでなく立海大テニス部への侮辱です。

恥を知りなさい。」

真琴の剣幕に、桃城たちはおろか丸井たちすらも、言葉を発することができなかった。

真琴はすぐにでも彼らを同じ目に遭わせてやりたいとさえ考えたが、ここで同じことをやり返しては彼らと同じだ。

それに、これまで切原が我慢きたことまで無駄にしてしまってはいけないと、彼女はどうにか衝動を抑えた。

「貴方達の部長に伝えて頂けますか。

私と一対一で試合をしましょうと。

そして私が勝ったら、もうこんなことは2度としないで下さい。」

真琴は拳を強く握ったまま踵を返した。

桃城と菊丸は暫く呆然としていたが、我に返るとすぐさまその場を立ち去った。



ジャッカルが直ぐに冷やしたのが功を奏し、丸井の腕は思いの外酷く腫れることはなかった。

真琴が丸井たちの元に戻ると、切原ががばっと彼女の肩に腕を回した。

「天澤、お前すげーな!お陰でちょっとスッキリしたぜ。

まあ、俺としちゃああの場でボコボコにしてやっても良かったんだけど。」

「切原くん、それじゃ大会出られなくなっちゃうでしょ。」

ジャッカルは丸井の鞄を肩にかけ、さらに丸井を助け起こした。

「俺もそれを心配してたが、天澤がああ言ってくれたおかげで助かったぜ。

俺らも多少気が晴れたし。ありがとな。」

ジャッカルの優しい笑顔にほっとして、真琴はようやく肩の力が抜けたような気がした。

「いえ、私は言いたいことを言っただけなので…。

でしゃばってしまってすみません。」

丸井はまだ右腕を庇っているが、痛みが少し引いてきたのか先程よりは表情は良い。

「いてて…やっぱ力入れると痛むな。

てか、お前大丈夫なのか?青学の部長はあの手塚だぜ。

幸村くんも全国最強クラスだけど、あいつも同じくらい強えぞ。

お前が強いのも、よくわかってるけどよ。」

「…そうですね。でも…。」

真琴はちょっと戯けたように肩をすくめた。

「ああでも言わないと、私も手が出てしまいそうだったので。

ムカつくじゃないですか、あんなの。

でも、喧嘩するわけにもいかないし…。」

それを聞いた3人は思わず吹き出した。

「お前、意外と好戦的なんだな。

俺と考え一緒じゃねえか。あー、サイコー。」

切原は笑いすぎて目元を拭っている。

「まあ、明日の朝練で幸村くんにことの次第を報告しようぜ。

俺も怪我したこと、言わなきゃなんねぇし。」

仇討ちは任せたぜ、と丸井は真琴にウインクして見せた。

「そうだな。じゃあ、ブン太を送って行かなきゃなんねーし、俺らはここで。」

「はい、また明日。」

「おつかれっしたー。」

真琴達は別れを告げ、それぞれの帰路に着いたのだった。