合宿の話はスムーズに進み、すぐにその当日になった。
(…結局、貞治とは連絡がつかなかったな。)
柳は、青学テニス部のレギュラーで友人の乾から返事がないまま当日を迎えたことが引っかかっていた。
合宿まで期間がなかったこともあるが、柳の情報網を駆使しても、現在の青学テニス部の内部事情を探ることは叶わなかった。
閉じたノートをじっと見つめる柳に、珍しく真田が察して言葉をかけた。
「蓮二、気にやむことはない。
どんな状況だったとしても、俺たちが負けることはないのだからな。
…それに、もしお前の友が道を違えたなら、正してやれば良いだけだ。」
「…ああ、そうだな。」
真っ直ぐな真田の言葉に、柳は少し救われた気がした。
「手塚、久しぶりだね。元気にしていたかい。」
青学テニス部の部長である手塚国光に、幸村はにこやかに挨拶した。
互いにそれぞれの部のマネージャーが側についている。
手塚は真琴を見下ろした。
「ああ。…君が、件のマネージャーだな。」
「初めまして。天澤真琴です。」
真琴は自己紹介し、一礼した。
「部長の手塚国光だ。」
手塚も淡々と自己紹介をする。
彼の態度は至って冷静で、乱暴なことをする人物ではなさそうに見えた。
そしてその隣には、青学のマネージャーと思しき女生徒がいた。
「マネージャーの宇都美藍菜です。よろしくね。」
彼女のくりっとした瞳が幸村の顔をじっと見つめる。
不躾な視線に、幸村は眉を顰めた。
「幸村くん、貴方って綺麗ね。
…欲しくなっちゃったかも。」
宇都美の言葉に驚いて、真琴は彼女の方を見た。
最後の言葉は小声だったので、幸村には届かなかったようだ。
宇都美はただにこにこしている。
彼女が纏う甘い香りが、何故か真琴の胸をざわつかせた。
「それじゃあさっそく、荷物を置いて集合しようか。」
幸村は営業スマイルで受け流すと、真琴と瀬川と共にその場を離れた。