各々の学校でウォーミングアップをしたあと、真琴と手塚は試合をすることになった。
真琴はいつものように立海のロゴの入ったジャージを身に纏い、髪を結った。
ガットに指をかけ、なんとなく爪ではじいてみる。
「天澤ちゃん、緊張してるの?」
マネージャーの仕事を手早く片付けた瀬川が、真琴の様子を見にきた。
「はい。何だか落ち着かなくて…。」
真琴は少し困った顔で笑った。
落ち着かないのは、手塚との試合に緊張しているせいではなかった。
合宿所にきてからずっと胸騒ぎがしてやまないのだ。
原因は分からないが、真琴の勘が警鐘を鳴らしている。
何か起こるのかもしれない。真琴は改めて気を引き締めた。
警戒心から表情が固い真琴に、瀬川も真剣な表情で声を顰めた。
「天澤ちゃん、気づいた?
青学の人たちのウォーミングアップ、かなりひどかったよ。
なんつーか、雑だし…前はもっと和気藹々とやってたんだけど。」
「そうなんですか…。
前に桃城さんと菊丸さんに会った時も、鈍ってるって言われていました。
やっぱり、何かあったんでしょうか?」
これまでマネージャーとして立海を支えてきた瀬川も、青学とは初対面ではない。
彼女も他のレギュラーメンバー同様に異変を察知していた。
「どうなんだろ。…こんなこと言いたくないんだけどさ。
なんか、向こうのマネージャー…宇都美さんとのお喋りにかまけてるような感じに見えたんだよね。
しかも宇都美さん、特に仕事もしてないみたいだし。」
「それは、なんというか…。」
「ま、部活に対する心構えなんて人それぞれでいいと思うんだよ?
青学がやる気なくても、私達には関係ないしね。
…でも前に試合した時は、真っ直ぐなテニス馬鹿の集まり、って感じだったんだけどな。」
以前の彼らを知らない真琴でも、今の状況がおかしいことはわかる。
少なくとも、強豪校の態度やモチベーションでないことは確かだ。
瀬川は真琴の背中を軽く叩くと、にこっと笑った。
「何にせよ、頑張っておいで。
…でも気をつけてね。何かあったらすぐ、私か幸村に言うんだよ。いいね?」
「はい!頼りにしてますね。」
真琴は笑顔で答えると、コートの方へ歩き出した。