その後も順番に試合をしていたものの、青学のレギュラー達はまるで相手にならない状態だった。
試合をしているメンバー以外は、ベンチで宇都美を囲んで楽しそうに話している。
見る限り、テニスの話をしているわけではなさそうだった。
「…彼らは一体、何をしに来たんでしょう。」
柳生が怪訝そうな表情でそう呟いた。
「全くじゃ。これなら俺らだけで練習してる方がよっぽど有意義やのう。」
「なんか、気合い入れてきたの馬鹿らしくなってきたぜ。」
ジャッカルの声はげんなりしている。
幸村は腕組みをしてじっと考えていたが、ふうと諦めたようにため息をついた。
「…わかった。もう学校ごとのメニューを中心に組み直そう。
蓮二、頼めるかい。俺は向こうと交渉してくるよ。」
「ああ。今の試合が済んだら、弦一郎にもそう伝えておこう。」
「助かるよ。」
今やっている真田と不二の試合も、あっさり勝負がつきそうだ。
幸村は青学メンバーの集まっているところへ向かっていった。
「天澤。」
丸井に声をかけられ、真琴は試合のビデオから顔を上げた。
丸井は真琴の隣に腰掛ける。
「色々とありがとな。
まさか、ほんとに勝っちまうなんて思わなかったけどよ。」
「いえ、私は自分のやりたいようにしただけですよ。」
真琴は再び手元のビデオに目線を落とした。
「それに…この頃の手塚さんなら、私は負けていたと思います。」
丸井が画面を覗き込むと、手塚と真田の過去の試合が映し出されていた。
「手塚も、桃城や菊丸と同じように…。
まあ、ああして練習してねぇの見たら納得だけどな。」
丸井は楽しそうにおしゃべりが盛り上がっている青学の選手たちへ視線を移した。
「でも、手塚さんって真面目そうだし、あんな風にサボったりする人には見えないんですけど…。」
真琴は首を捻った。それに関しては、丸井も同感だった。
青学の選手たち全員に言える事だが、テニスを疎かにしてまでマネージャーと遊んでいる理由が理解できない。
そんなに楽しいか?ソレ。
後ろから切原が揶揄うように口を挟む。
「んまあ、手塚さんも男だったってことじゃないッスか?
まあまあ可愛いし、これまでマネージャーいなかったんなら浮かれちまうのかも。
…俺なら、テニスの邪魔になるような奴は要らねえけど。」
話しているうちに、幸村が交渉を終えて戻ってきた。
「みんな、今の試合が終わったら練習メニューに入るから準備をしてくれ。
基本的に学校ごとに別れて練習することになった。
いつもより時間がある分、バテないようにね。」
立海のレギュラー達は立ち上がり、各々の配置へ向かった。
「真琴。」
真琴が球出しへ向かおうとすると、幸村に声をかけられた。
(精市くん、やっぱり体調悪いのかな…。)
最初の試合が終わったくらいからずっと、幸村の顔色が悪い。
幸村が急に真琴の耳元に顔を近づけたので、真琴はどきりとした。
「 」
「え…?」
驚いて真琴は幸村の方を見たが、彼はそれ以上何も言わなかった。
ぽんと彼女の頭に触れると、幸村は歩いていってしまった。