「…てかさ、瀬川も怪しくね?
天澤のこと庇い立てするなんて、グルなんじゃねえの。」
丸井が攻撃の矛先を瀬川に向けた。ジャッカルもその言葉に同意する。
「宇都美を傷つける奴なんて、俺らの仲間じゃねえよ。」
その一言に、瀬川は固まった。
「……冗談、でしょ?」
2年と少しの間、瀬川は全力で部をサポートしてきた。
特に今の3年生達とは同学年で、嬉しいことも悲しいことも誰よりも近くで共有してきた。
最高学年になったら、彼らの手で必ず全国大会優勝を勝ち取って欲しいと、そう願っていた。
そして1年の時、瀬川もテニス部の一員だと言ってくれたのは、他でもない丸井とジャッカルだった。
「出て行って下さい。貴方達はもう、我々の仲間などではありません。」
目からぼろぼろと大粒の涙が零れたのが分かった。
彼女は少しの間立ち尽くしていたが、すぐにジャージの袖でそれを拭うと彼らに背を向けた。
「…わかった。もう、いい。
きっと本心じゃないんだろうけどさ。
そこまで言われたら、あたしも面倒見切れないよ。」
瀬川は顔を上げることができない真琴を連れ、倉庫の出口へ向かった。
そこへ、ぬっと長身の男が現れる。
立っていたのは乾だった。
「これはちょうど良いところに…。
お前達には宇都美が世話になったようだな。
少しばかり礼をさせて貰おう。
…ちょうどむしゃくしゃしていたんだ。」
瀬川は背筋が凍った。
乾は宇都美に視線を送る。
「乾くん、優しくしてあげてね?」
「さあ…それはどうかな。」
宇都美はひらひらと手を振って乾達が出ていくのを見送った。
乾は2人をまとめて倉庫の裏の茂みへ連れ込んだ。
「さて…。」
乾は手をぱんぱんと払う。逆光で彼の表情は読めない。
乾の背後に、青学の選手達がこちらへ向かってきているのが遠く見えた。