真琴は立海大付属中学校の2年生として編入することになっている。
幸村を含め、かつての友人達もそこに通っていると聞いていた。
「着いたよ。この辺りに居るって言ってたんだけど…。」
校門の前で幸村はあたりを見回す。
その時、2人の後ろから急に大きな声がした。
「もしや、天澤か?」
真琴が振り返り少し視線を上にあげると、こちらを見下ろす男子生徒と目が合った。
「…?」
「…。」
見つめ合ったまま首を傾げる。
少しの間沈黙が流れ、耐えかねた幸村が吹き出した。
「真琴、弦一郎だよ。ちょっと昔と印象が違うかも知れないけど。」
「えっ、真田くんなの…?」
名前を聞いても、目の前の男子生徒と昔の友人が一致しない。真琴はまじまじと真田を見た。
(随分風格があるけど、そう言われれば似ているような気も…。)
幼い真田の丸い頬やきらきらした目を彼と重ねて、真琴はもう一度首を傾げた。
「そんなに昔と違っているか?自分ではあまりわからないのだが…。」
真田の言葉に、幸村も驚く。
「そうなのかい?…昔より、だいぶ圧が増してると思うよ。」
「ふむ、圧か。確かにな。」
素直に納得する真田に、真琴も思わず顔が綻んだ。
「真っ直ぐなところは変わってないね。真田くんがいるってことは…。」
「久しいな、天澤。」
真田の後ろから現れたのは柳蓮二だ。
彼も高身長なので、真琴は引き続き見上げる体勢である。
「柳くんも、久しぶりだね。」
柳の涼しげな目元は幼い頃のままだった。
以前おかっぱに切り揃えられていた髪は、スポーツマンらしく短く整えられている。
「精市、だから言っただろう。天澤は83%の確率で帰ってくると。」
「そうは言っても、いつ帰ってくるかなんてわからなかったじゃないか。
親御さんの出張の内容も、当時の俺はわからなかったし。」
なんでも確率で表現するところも、昔のままだ。
(懐かしい雰囲気…。私、帰って来たんだ。)
3人と居ると、改めてそう実感できた。
他愛無い話や昔話に花を咲かせながら、3人は教室へ向かうのだった。