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「俺に君たちの力を貸して欲しい。

俺だけでは、どうしても宇都美に近づくのに限界がある。

怪しい動きをすれば、香を強められて今度こそ本当に操られてしまうだろうからな。

だから頼む。

俺の仲間と、君たちの仲間をあいつから取り戻したいんだ。」

乾は2人に深々と頭を下げた。

真琴と瀬川は慌てて乾に面をあげさせた。

「むしろ、あたし達からお願いしたいくらいだよ。

何が起こってるのかがわかっただけでも、気持ち的にめちゃくちゃ救われたし。」

「私たちにできることがあるならやらせてください。

喜んで協力します。」

「そう言ってくれると有り難い。

…もう、あんな状態のあいつらを見るのは、たくさんだ。」

乾は一瞬だけ辛そうな表情を見せたが、すぐにそれを掻き消した。

瀬川は組んだ脚に頬杖をついた。

「さて、具体的にどうするかだけど…。

乾、香ってそもそもどうやって出してるんだ?」

「香の発生源は手のひら大のからくりだ。

宇都美が持っているそれを壊せば使えなくなるだろう。

ただ、壊した瞬間、香が噴き出す可能性がある。

壊すのは屋外が良いだろうな。」

「問題は、どうやってそれを取り出すように仕向けるか、ですね。」

乾は頷いた。

「あいつは香りを強めたい時にそれを操作するんだ。

屋外で、何かそういった状況を作れれば良いのだが…。」

真琴はふと、気になったことを乾に尋ねた。

「そういえば、香で操られているとテニスも弱くなるんでしょうか。」

「そうだな…。

少なくとも、宇都美はテニスをあまり知らないから、プレーに関しては具体的な指示は出せないだろう。

操られていると判断力が落ちるから、実力は発揮できないんじゃないかな。」

「そうですか…。

それなら、こんな計画はどうですか?」

2人に内容を話す。

「…ふむ。いい案だと思うぞ。」

「でもそれ、天澤ちゃんが危なくない?」

「大丈夫、だと思います。

私、これでもテニスは結構強いので。」

瀬川も乾も、一番辛い時に真琴を助けてくれた。

今度は自分が助けになりたい。

(精市くんにも、守られるだけはもう嫌。

私も戦うって決めたんだから。)

それは、幼い頃幸村、真田、柳に守られていた時からずっと目標にしていた事だった。

「では、さっそくだが明日実行しよう。

合宿も残り少ないし、ここでケリをつけるしかない。」

3人は互いを見て頷いた。