皆が疲れ切って眠ってしまっている中、幸村は寝付けずにいた。
隣に座っている柳も起きてデータの整理をしていた。
本当に隙がない男だと、ぼんやりそう思った。
流石に車内なので休み休みではあるが、その執念には感服するばかりだ。
幸村の視線を感じたのか、柳は試合のビデオを一時停止した。
「精市。今日伝えるのか?」
幸村は椅子からずり落ちそうになった。
何も話していないのに、柳は何もかもお見通しだ。
「なんでバレるかなー。俺、そんなに分かりやすいかい?」
彼はくすっと笑った。
「一般的にはそうではないだろうが…。
お前は天澤のこととなると途端にガードが甘いからな。」
ぐうの音も出ない。
「成功確率、聞きたいか?」
「…いや、やめておくよ。
確率がどうでも、俺がやることは変わらないからね。」
幸村は目を閉じて、座ったまま少し伸びをした。
「お前ならそう言うと思っていた。
案ずるな。お前らしく行けば良い。」
「そうするよ。」
柳は、幸村が前に進もうとしていることを心底喜ばしく思っていた。
それは、これまで彼がどんな思いで過ごしてきたかをよく知っているからだった。
(願掛けなんて、必要もないのだろうが。)
それでも柳は、友人である2人の幸せを願わずにはいられなかった。