幸村は真田、柳と共に、何年かぶりに真琴の家を訪れた。
引っ越した後も使用人が管理していたため、昔と変わらない手入れされた庭が3人を出迎えている。
ガーデニングに詳しくなった今は、四季折々に彩られる美しい庭がどれ程の手間暇をかけて作られているかよくわかる。
着く前に連絡を入れたので、真琴はすでに門の近くで待っていた。
「いらっしゃい。3人とも部活お疲れ様。」
そう言って微笑んだ真琴は、テニスウェアに身を包んでいる。
真琴は門を開け、3人を通した。
彼女を先頭に、3人は後ろをついて歩く。
「やる気満々って感じだね。」
「もちろん。部活終わりで疲れてるところを来てもらってごめんね。」
「今日はミーティングが中心だったから、俺たちも物足りないと思っていたんだ。ちょうど良かったよ。」
「うむ。やはり毎日鍛えねば、身体が鈍ってしまうからな。」
話しながら歩いているうちに、家の裏手のテニスコートに着いた。
3人が鞄を置き、靴を履き替えている間に真琴がボールを運び、ネットを張った。
一番早く支度の終わった幸村が、ネットを挟んで真琴と向かい合う。
真田と柳はコート横のベンチに座って、その様子を見守っていた。
「お待たせ。やろうか。」
幸村がコートに一歩足を踏み入れた瞬間から、先程までの和やかな雰囲気は立ち消えた。
ぴりっと空気が張り詰める。
真琴はラケットを握る手に力を込めた。
緊張感はあるが不思議と怖さはなく、むしろ身体の底から高揚感が湧き上がるのを感じた。
「嬉しいな。精市くんと、またこうして一緒にテニスができるなんて。」
「俺もだよ。いつも通り、サーブはあげるね。」
「ありがとう。じゃあ、遠慮なく。」
真琴が手元でボールをバウンドさせる。
彼女の伏せられた目に、一瞬見惚れそうになった。
幸村は軽く構えて真琴のサーブを待った。
トスが高く上がり、彼女がかざした手の上でボールが一瞬止まって見えたような気がした。