16

会えなくなってから何度目かの水曜日、ついに彼女は丸井の前に現れた。

「あっ…!!」

道の反対側、まばらな人通りの中に彼女は歩いていた。

その姿を捉えて走り出した瞬間、目の前の信号が赤になった。

無視して横断しようかと思ったが、少し広い直線の車道は猛スピードで車が往来していてさすがに断念した。

「くっそ…!」

ここで逃したら、もうチャンスはないかもしれない。

そんな確信が丸井の中にあった。

次の信号の前で彼女が立ち止まったので、手前の歩道橋を駆け上り、半分飛び降りるように階段を下る。

青になった信号に、彼女が歩き出した。

信号が点滅し始めたが、構わず駆け抜け手を伸ばした。

やっと…!

ぱしっとその手を取った瞬間、自分の中で錠の開く音がした。

振り返った彼女の瞳に時は止まって、丸井は全てを思い出した。

過去の思い出、その時見た風景、触れた手の温度…奥底に眠っていた記憶が次々と鮮明に湧き上がる。

そうだ、お前は…!

「聖良…!!」

そう呼んだ瞬間、彼女の目から涙が溢れた。

「ブン太くん…。」

前と同じ呼び方で、彼女は丸井の名を呼んだ。

ドクンと胸が鳴る。

俺はこの感覚を知っている。

丸井は無意識に聖良の身体を抱き寄せていた。

「お前をずっと、探してた。」