会えなくなってから何度目かの水曜日、ついに彼女は丸井の前に現れた。
「あっ…!!」
道の反対側、まばらな人通りの中に彼女は歩いていた。
その姿を捉えて走り出した瞬間、目の前の信号が赤になった。
無視して横断しようかと思ったが、少し広い直線の車道は猛スピードで車が往来していてさすがに断念した。
「くっそ…!」
ここで逃したら、もうチャンスはないかもしれない。
そんな確信が丸井の中にあった。
次の信号の前で彼女が立ち止まったので、手前の歩道橋を駆け上り、半分飛び降りるように階段を下る。
青になった信号に、彼女が歩き出した。
信号が点滅し始めたが、構わず駆け抜け手を伸ばした。
やっと…!
ぱしっとその手を取った瞬間、自分の中で錠の開く音がした。
振り返った彼女の瞳に時は止まって、丸井は全てを思い出した。
過去の思い出、その時見た風景、触れた手の温度…奥底に眠っていた記憶が次々と鮮明に湧き上がる。
そうだ、お前は…!
「聖良…!!」
そう呼んだ瞬間、彼女の目から涙が溢れた。
「ブン太くん…。」
前と同じ呼び方で、彼女は丸井の名を呼んだ。
ドクンと胸が鳴る。
俺はこの感覚を知っている。
丸井は無意識に聖良の身体を抱き寄せていた。
「お前をずっと、探してた。」