幼い頃から、聖良は近所に住む3つ年下の男の子とよく遊んでいた。
公園に行ってブランコをしたり、家でおやつを一緒に食べたり、ゲームで遊んだり…。
優しくて面倒見の良い聖良にその子はよく懐いていたし、彼女自身もその子を本当の弟のように可愛がっていた。
「俺、聖良と結婚する!」
一緒に遊んでいる時に嬉しいことがあると、その子はいつもそう言ってにかっと笑った。
「はいはい。」
聖良はぽんぽんとその子の頭を撫でる。
それが丸井ブン太と聖良の日常だった。
ふと、彼が大きくなったら、いつかこうして一緒に遊ばなくなる日が来るのかもしれないと思ったりする。
ブン太くんは男の子だし、こうしてよしよしするのも恥ずかしがるようになるだろな。
「今のうちに、可愛がっておかないとね。」
不思議そうに首を傾げる丸井の赤い髪を、聖良は何度も優しく撫でた。
時が経ち、聖良は高校生に、丸井は中学生になった。
制服を着た姿が彼の成長を感じさせる。
中学に入って忙しそうにしながらも、丸井は毎週末聖良のところへ来ていた。
学校の話や部活の話、友達の話…。
聖良の知らない話を聞くと、楽しそうで良かったと思うと同時に寂しいような気持ちにもなる。
彼が中学生になって半年が経とうという頃には、差があったはずの身長は格段に伸び、聖良と並ぶほどになっていた。
見上げられていたはずの視線は同じ高さになった。
ある時から、気軽に撫でていたはずの頭に手を伸ばすのを意識的にやめた。
「聖良。」
その日、それまでしていた話が途切れると、丸井は改めて聖良をまっすぐ見つめて名を呼んだ。
その真剣な表情は、幼い頃の面影を残しながらも着実に成長していた。
丸井のことは誰よりも良く知っているはずなのに、最近の彼は時々聖良の知らない複雑な表情を見せることがあった。
いつからだっただろう。
丸井の目線に、表情や仕草ひとつに、鼓動が早くなるようになったのは。
「俺、お前が好きだ。」
その言葉は、もう幼い子供の戯言ではなくなっていた。