彼女が教科書を机の上に広げていたので、内容から高校生であることがわかった。
そういえば、近くにこんな制服の高校があった気がする。
「勉強してたの、邪魔しちまったか?」
「ううん。そろそろ集中力切れてきてたし。
その制服、立海大の生徒さんだね。」
「ああ。丸井ブン太、シクヨロ。お前は…。」
そう言いかけたところで店員がドーナツとオレンジジュースを持ってきたので、丸井はそっちに夢中になった。
「おっ!来た来た。
ここのドーナツうめぇんだぜ。」
丸井はドーナツを半分に割ると、片方を彼女に差し出した。
「はい、相席代ってことで。」
「いいの?ありがとう。」
彼女は微笑んで、ドーナツの半分を受け取った。
ぱくりと一口頬張ると、卵とバターの芳醇な香りとしっとりとした食感が堪らない。
「うめぇ〜!!やっぱこれ最高だな!」
「うん、すごく美味しい。」
少女も幸せそうににこにこしながらドーナツを頬張った。
心にある空白に波紋のようなざわめきが広がる。
初めて話したはずなのに、どうしてこんなに彼女のことが気になるのか分からない。
だがそれは、心地よい感覚だった。
2時間ほど話した後、丸井と少女は店の前で別れを告げた。
歩き出してから、丸井は彼女の名前を聞き忘れたことに気がついた。
…まあ、いいか。
彼女は大体水曜日の夕方にあの店に来ると言っていた。
約束をしたわけでもないのに、また来週彼女と会うのがすでに待ち遠しく感じられていた。