水曜日、期待して例のカフェに行くとまだ彼女は来ていなかった。
いつものようにドーナツとオレンジジュースを注文して、スマホを見ながら時間を潰す。
勉強しなきゃなんないしな…とか自分に言い訳してここに来たのに、一人ではてんで勉強が手につかない。
約束したわけでもないのに、丸井は当然のように彼女を待っていた。
ドアベルの音に通路の先を覗き見ると、目当ての少女が入ってきたところだった。
彼女は丸井と目が合うとにこっと笑った。
「丸井くん、もう来てたんだ。」
「おう、お疲れ。」
自然な流れで彼女が向かいに座る。
それだけで心が満たされたのを自覚して、丸井は不思議に思った。
なんでこんなに会いたかったんだろう。
「丸井くん?」
彼女の声にはっとして、丸井は顔を上げた。
「あ、いや。…そうだ、お前高校生だろ?
俺、テスト近くてさ。勉強教えてくんねぇ?」
「私で良ければ。丸井くんは何年生?」
「俺は3年。お前は?」
「私も3年生だよ。じゃあ、3つ違いだね。」
思いの外年上だった。そりゃ大人びて見えるはずだ。
丸井は数学の教科書を取り出して、テーブルに広げた。