いつも通りの朝のルーティンをこなして大きな姿鏡の前で最終確認を行っていると、目を擦りながらむくりと起き上がるユウの姿が目に入る。
「ヴィル、おはよう」
「おはよう、身支度はしっかりね」
「ふぁい…」
小さく欠伸を噛み殺しながら起き上がり今日に魔法をつかって布団を綺麗に治したり、髪の毛を整えたり。お借りしまふ…なんていいながら洗面所に行けばはたまた魔法で洗顔やら歯磨きを済ませて10分もしないうちに眠たい表情はさておいてどこに出しても恥ずかしくないユウが仕上がる。
さすがにスキンケアくらいは魔法を使わないでして欲しいけど、最近やっとできるようになった魔法のコントロール制度をあげたい!とキラキラした顔で言われてしまえば仕方ない。
「ヴィル、できたよ」
上手に出来たかな、と首を傾げながら笑いくるりと一周して見せれば自信ありげに尋ねてくるところもまた愛らしい。
「上出来じゃない、さすがアタシが教えこんだだけあるわ」
「わーい、ありがとうヴィル」
ヴィルだいすき、と言いながらぎゅうっと抱きついてまだまだあどけない顔を見せる。部屋を1歩でたらポムフィオーレ寮生として恥ずかしくない振る舞いをなさい。胸を張って、背筋を伸ばして。つねに凛と美しくあるべきと何度も問いたかいもあり、力の抜けた表情は2人きりの時にしか見せない。
そう、この子はアタシがいなくたってなんだってできる。聞き分けも良ければ育てた甲斐もあってセンスだって磨かれた。先日のような不意に襲われてしまうことは誰しも対応が難しいけれど、それを除けば普段の生活も授業も。なんだってアタシに頼らずにできてしまう。
好意の言葉を口にしながら彼女に擦り寄られると、胸の奥底に溜まったどろりとした感情が軽くなるように感じた。
今は、絶対にどこへも生かせない。
彼女が自分で出来ることを完全に理解して1人で巣立っていけるその日まで。その日まではアタシの手の中で笑っていて。
そんな呪いのような祝福のような思いを乗せて「アタシも愛してるわ」と囁けば蜂蜜色の大きな瞳が幸せそうに綻ばせた。