祝福


ヴィルと同じ寮になったその日からポムフィオーレ寮生として胸を張って美しく生きることを徹底的に教えこまれた。


背筋を伸ばして歩くこと、食べ方のマナーやパーティーでのルール。スキンケアやメイク、トレンドをおうことの必要性。人との接し方や、日々の過ごし方まで。



特に身だしなみには厳しく言いつけられた。寮服だけでなく、制服や式典服の着こなしなど様々。
寮服や制服は毎日着るものだからすぐに合格点を貰えたけど、式典服は着る機会も滅多にない上に普段着ることの無いローブに四苦八苦したことを覚えている。



それでもさすがに2年生になり、自分でも随分上手に着られるようになったことを自慢しなければ!とベルトにきりきりと締めあげられるウエストの苦しさに耐えながらヴィルを探し回る。


寮長ともなると式典の際には滅法忙しいらしく、朝早くヴィルの部屋に駆けつけた時にはもうヴィルはいなかった。ルーク先輩は朝からオクタヴィネル寮に向かっていってしまったし…仕方なしに学園を駆けずり回っているとひときわ背の大きな獣人族の男の子と話しているヴィルを見つけた。



なにやら話をしているため、口から出かけた「寮長」の声をあわてて引っ込め、物陰から2人を見つめているとヴィルが男の子の式典服を締め直し始めた。なにやらお説教をしながらいつものごとくベルトをキリキリと締め上げている後ろ姿にふっと笑いそうになる。


もう何も言われなくっても1人で式典服を美しく着れるようになった達成感と寂しさと、ヴィルに指導という名のお説教をされている彼に羨ましさを覚えた。


もう、お化粧だって勉強だって日々の造作のないこともすべてヴィルが教えこんでくれたおかげで1人でなんだってできる。男の子に襲われたくらいマジカルペンがなくっても1人で対処出来る。


だけど、ヴィルが私に興味を無くすその日まで。
私の手を離してしまうその日まで、ヴィルがいなければ生きていけない私をどうか傍に置いていて。






「あら、綺麗に着られてるじゃない。上出来よ」

式典が始まる直前、右斜め上から掛けられた言葉に顔がほころぶ。ありがとうございます、寮長と恭しく一礼をすれば合格と言わんばかりにゆったりと微笑み、寮長としての仕事を全うしていく。






ねえヴィル、愛してるよ。
どうかそばにいさせてね。