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名前は日本に残る事になった。
卒業式後ゆっくりする間も無く引っ越しや片付けなどで春休みはとにかく忙しかった。
母の希望で、名前の高校から徒歩15分のオートロック付き2LDKマンションに決まった。

「贅沢すぎでしょ。」

と名前が言えば、

「安全面だけは譲れないから。」

と母と兄。ちなみにエントランスにはコンシェルジュ付きである。

「うちってそんなに金持ちだったっけ?」
「あら、今頃気がついたの?」

だったら、もう少しお小遣いが欲しいのにと心の中で呟いた。
母は、名前と兄の入学式が終わったら、既に海外にいる父のところへ出発する予定だ。母がいないという生活にはやはり不安はある。けれども自分で日本に残ると決めたからにはしっかりとしなければと名前は思っていた。





高校の入学式。

「今日から高校生かぁ。」

箱根学園高等学校。これから3年間名前が通う高校である。
高校を決める際、名前は最後2校で迷った。そして制服の好みで決めた箱根学園。そんな理由かと友達には言われたが。

「同じ中学から来てる子はいるの?」
「私の知ってる限りではいないみたい。」
「そう、新しい友達たくさん出来るといいわね。」
「うん。」

入学式も終わり、生徒は教室へ向かう。
新入生のクラスは、入学直前に届いた書類で確認していた。くるりと教室を見回してもやはり知った顔はひとりもいなかった。少し緊張しながら名前は自分の席を探し座った。隣の席はまだ来ていないのか空席のままだ。
担任が教室へ入ってくる。少し話した後、出席を取り始めた。

「荒北。」

えっと驚いた。一瞬名前の知っている荒北の事かと思ってしまったが、先程見たとき居なかった事を思い出し、同姓かと思ったところに、

「いないのか?荒北ー?荒北靖友。」

名前の心臓がどんどんと早くなる。
同姓同名、そんな事ってあるのか、まさか本当に荒北なのかと、それしか頭に浮かばない。

「あれー?休みの連絡入ってたかぁ?まぁいいや。次呼ぶぞー。」

と次々に名前が呼ばれていくが、誰の名前も頭には入ってこなかった。


結局その日、荒北靖友が教室へ現れる事はなかった。




2019.12.04


monoGatari