14
ゴンッと音と共に、名前は顔を上げた。
昨晩珍しく夜更かしをし、朝から睡魔と戦っていたのだが、どうやら負けてしまったようだ。
「苗字が授業中居眠りなんて珍しいな。」
と先生やクラスメイトにクスクスと笑われる。
盛大な音を立ててぶつけたおでこが痛いし、恥ずかしいしで名前は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「さっき見てたよー。」
荒北とは逆の隣に座る男子に笑われた。
「すっげー頭がフラフラしてたから、これはやべーんじゃねーかと思ってたらいい音聞こえた。」
「だったら、起こしてくれればいいのに。」
「起こしたよ、俺と荒北で両方から突いたりしてたけど、全然起きねーんだもん。」
そうだったのか、荒北も起こしてくれてたなんて嬉しくておでこの痛みなど忘れてしまいそうな程浮かれる。
その後の授業も半分寝た状態ながらもなんとか過ごし、帰宅時間になる直前にまた机で名前はグッスリと寝てしまった。
「なぁ、コイツどーすんのォ?」
「何しても起きないから、私部活の途中にでも抜けて起こしに来るよ。」
「ふーん。」
名前の友達が何度も起こすがまったく起きる気配のなく、荒北もまた遅くなると何か起きては困ると思い、名前の友達に聞くと、起こしに来ると言うのでそのまま部活に向かった。
それから40分程経った頃、名前は友達に起こされている。
「ちょっと、名前。そろそろ起きなよ。帰らないとヤバいんじゃない?」
思い切り肩を揺するとのんびりとした声で返事が返ってくる。
「んー、うんー、起きた。大丈夫。あれっ、みんなは?」
「とっくに終わってるよ!私も部活戻らないといけないから。起きたね?」
「うん、ごめんね、ありがとう。帰ります。」
「気を付けて帰ってね!」
そう言うと、友達は走って戻って行った。
それから数時間、荒北達自転車部も部活を終え、帰り始めていた。
「あー腹減ったァー。」
「ん?おめさんも食う?」
「フク、今日の夕飯のデザートにりんごゼリーとあったぞ。」
「それは楽しみだ。」
部室を出て校門まで行くと、暗い中怪しい動きをする人影が見える。
「あれはなんだ?不審者か?」
東堂が目を凝らして見ている。右往左往し、時折携帯を耳に当て学校内を除く人影に、4人は身構えながら近づいていくと、突然のそ人影が4人に向かって駆け寄ってきた。
「君達!ちょっと教えて欲しいんだけど。」
その声は、とても焦っているようだった。
「名前見なかったか?苗字名前って子、学校にいなかったか?」
そう言われて、荒北はその男をよく見ると、名前の兄である事に気が付いた。
「えっと、苗字さんの?」
「兄です。もうこんな時間なのにまだ帰ってこなくて、携帯も出なくて。帰り道を探してみたが見当たらないんだ。学校で見てないか?」
「チッ…。」
荒北はそう舌打ちすると、校舎へと走った。それに続いて、他の3人と兄もついて走る。暗く人のいない廊下に5人の走る足音が響いた。
「いた。」
教室の机の上にカバンを置き、その上でまた寝てしまっている名前。兄はずんずんと名前のもとに向かいゴツンと後頭部に拳を下ろした。
「………ったあーーーい!」
一瞬何があったのか分からずにいた名前は、後頭部に走る痛みに叫んだ。
「痛いじゃねーよ!お前なにこんな時間まで寝てんだ!何かあったんじゃないかって心配するだろーが!」
「えっ!お兄ちゃん?なんで?ああっ!また寝ちゃってた…。」
「お前マジでふざけんなよ…あーもう何もなくて良かった…。」
「ごめんなさい。」
名前は兄に謝ると、ほっとした表情に変わった。
「君達もごめんな、ありがとう。」
兄は扉にいる4人にそう言った。名前もそちらを向くと、苦笑いしている2人、無表情の1人、仏頂面の1人が目に入った。こんな姿を見られて恥ずかいと名前も苦笑いをする。
「見つかって良かったですね。」
「うむ。苗字さん、こんな時間に女子ひとりでいるのはよくないぞ。」
「はい、ごめんなさい。ご迷惑おかけしました。」
「ほら、帰るぞ。…ん?あれ?君もしかして荒北くんか?」
先程は慌てていた為気がつかなかったが、兄は荒北がいる事に気が付き驚いた。
「どうも…。」
「やっぱり荒北くんか!名前と同じ高校だったんだな!知らなかったよ。」
なんで教えてくれなかったのかと兄は名前の肩を叩いた。
帰り道、兄はずっと荒北に話しかけていた。
「靖友とお兄さんって知り合いなんだな。」
「うん、私荒北くんと同じ中学だったから…。」
「そうなのか?それは知らなかったぞ。」
前を歩く荒北は、兄の質問責めに困ったように頭をかいていた。
2019.12.14