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荒北は部活の休憩中、教室に忘れた携帯を取りに戻っていた。
教室を覗くと、スケッチブックと鉛筆を持った名前が、ベランダから外を眺めている。
名前は、外にいる自転車部の中に荒北がいるのではないかと探しているため、教室に入ってきた荒北には気がつかなかった。
荒北は、机の中から携帯を取り出そうとした手を止めた。そして名前の背中を見つめ、開きっぱなしのベランダの扉に手をかけ、名前に声をかけた。

「早く…。」
「えっ?」

名前はまさかの声に驚き振り返る。

「早く、帰れよ。」

やはり荒北は名前と目を合わせない。

「あっ…うん。」
「…また、兄ちゃんにゲンコツされんぞ。」

そう言うと荒北は名前を見てニヤリと笑った。
名前は、やっと自分を見てくれたとの思いであまりの嬉しさに涙が出そうになるのをぐっと堪えた。
荒北は自分の席へ向かうと机の中の携帯を取り出そうとしている。

「荒北くん、荒北くんは私と話すの嫌?昔を知ってる私と話すのは嫌?」

そう名前が言うと、荒北は携帯を手にし名前を見る目がいつもより少しばかり大きく開いた。

「私は、荒北くんと話したい。前みたいに普通に話せる友達…になりたい。」

名前の言葉に荒北はしばらく黙る。

「…お前は、オレを許せるのか…?」

名前は、荒北のその言葉が分からなかった。その言葉に今度は名前が黙ってしまう。

「お前が平気なら、オレは別に…嫌じゃない。」



それから徐々にではあるが、名前と荒北との会話も増えていった。




2019.12.30


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