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「暑いね…。」

10月だというのに、とても暑い日の運動会。
みんなタオルを首に巻いたり頭にかけたりしている。
名前が出る競技は、借り物競走とクラス混合リレーだ。荒北は、玉入れと名前と同じくクラス混合リレーである。

「荒北くんと新開くんが玉入れって面白いよね。」
「荒北寝てるうちに、新開が決めちゃってたもんね。」
「知った時の荒北くんの顔が面白かった。」

種目を決める時間、荒北は爆睡中だったので、新開が俺と同じでいいやと名前を書き込んでしまっていた。

玉入れ競技で呼ばれ、ふてくされ気味で新開の横に腰を下ろしている荒北に、新開がある場所を指差しながら話しかけている。何を指しているのかは分からないが、荒北と新開が楽しそうに笑い始めた。


「ピィーーー!」

笛と共にみんな立ち上がり、近くにある玉をどんどん上へと投げていく中、新開と荒北はある場所に向かって物凄い勢いで玉を投げつけている。
何をしているのだと投げられている先を見れば、東堂が痛い痛いと必死に玉を避けている。

「何あれ、荒北も新開も全然玉入れしてないじゃん!」
「東堂くん…すごい当てられてるね。」
「あいつらちょー仲良しだね。」

クラスのみんなもそれを見ながらゲラゲラと笑っている。
玉入れが終わると、東堂が荒北と新開に文句を言っているが、二人ともただただ笑っていた。

それから少しして、女子の借り物競走が始まった。
パァンと音と共に、みんなと一緒に名前も走り出した。
簡単なものが当たるといいなと思いながら、名前は紙の入った封筒をひとつ手に取る。

「やった!簡単!」

そう喜びつつ、急いでクラスの方へと走り出した。
クラス近くまで来ると、何だ?とみんなから声がかかる。

「男子のハチマキ!」

名前はそう言って荒北を探す。

「俺の持ってって!」

と数人に言われるが、なぜか名前は

「だから、男子のハチマキなの!」

と答え、荒北を見つけると

「荒北くん、ハチマキ!ハチマキ貸して!」
「おぉ…。」

名前の勢いに押されながらも首にかけていたハチマキを渡す。

「ありがとう!」

そう言うとゴールに向かって走る。
途中、俺らも男子だからぁーとの声は名前には聞こえていなかった。

「やった!1位だったよー!」

名前は喜びながらクラスに戻る。

「荒北くんのハチマキのお陰で、いつもより早く走れた気がするよ。ありがとう!」
「おぉ…。」
「名前ちゃん、おめでとう。」
「ありがとう、新開くん。」

「靖友、おぉしか言ってないぞ。」
「…おぉ。」

最後の種目、クラス混合リレーが呼ばれる。

「うぅー緊張する。1位取れるかなぁ。」
「ハッ、取れるダロ。」
「わっ、珍しくやる気だね、荒北くん。」
「やるからには、ナァ。」

男女四人ずつ交互にはしるのだが、名前はアンカー前、荒北はアンカーを務め200mを走る。

「転びませんように。私、転びませんように…。帰宅部ですが頑張るので…転びませんように…。」

と祈るしかない名前に

「大丈夫だってェ。」

荒北はそう言うと名前の頭をクシャっとひと撫でした。

「よーい、パァン!」

スタートと共に、名前のクラスと何人かがぶつかり合ってしまいバトンを落としてしまう。すぐに拾いなんとか7番目の位置に着く。しばらく順位は変わらないが前との差をどんどん縮め、新開にバトンが渡ると5位まで上がった。

「名前ちゃん、頼んだ。」

新開のお陰で、4位3位とはすぐ目の前の距離にいる。
名前はバトンを受けると借り物競走と比べ物にならない速さで走った。転ばないを唱えながら。荒北にバトンを渡す時には3位まであがっていたが、2位までの距離が縮めきれていない。

「あとお願い…。」
「おぅ。」

バトンを受け取った荒北は、驚くほどの速さだった。名前は息切れしながらも荒北を目で追っている。ぐんぐんと前との差を縮め、一気に1位と2位を抜き去り、スピードは落ちないままゴールテープを切った。

「凄い!凄いよ!荒北くん!」
「おぉ、後ろから福ちゃんが来てたからなァ。」

4位を走っていたクラスのアンカーが福富だったのだが、福富も驚く速さで、荒北は福富に抜かれないよう必死に走ったそうだ。
1位は名前達のクラス、2位は福富達のクラスだった。

「やったね!1位だよー。」
「お前も転ばなくて良かったな。」

クラスに戻るとみんな大盛り上がりだった。

「荒北!お前なら1位取れると思ってたぞ!」
「アァ?どっから目線だヨ。」
「荒北くん、ちょーカッコ良かったよ!」
「あぁ?おぉ、あんがと…。」
「荒北ー照れんなよー!」
「俺も惚れそうだぞー!」
「うっせー!」

名前は楽しそうな荒北を見て、ほんの少しだけもやっとした気持ちになる。

「名前、どうしたの?」
「荒北くん、本当にカッコ良かったよ。」
「そうだね。」
「どうしよう…。」
「何が?」
「あんな荒北くん見たら、みんな好きになっちゃうよ。」
「………たぶん、それはない。」

名前は荒北の周りにいる女子達を眺めながら不安な気持ちになった。




2020.02.02


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