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バレンタインから1ヶ月、名前は何も変わりない日々を過ごしていた。
バレンタイン翌日も、ほんの少し意識してたものの「昨日は送ってくれてありがとう」と言えば「いいえェ」と普通に返ってくる。もちろんチョコの話など出る事もなかった。

今日のホワイトデーだって、名前は腹ペコで受け取ってくれたチョコだろうから、お返しが貰えるなんでこれっぽっちも思っていない、と言ったら多少嘘にはなるが、荒北がお返しを用意する姿なんてどうしても想像はできない。

そんな事を考えながら登校する。
下駄箱に着くと、いつもより少し騒がしい。
その中心に、自信に満ちた笑い声が聞こえた。

「東堂くんか、バレンタインでも見た光景だなぁ。」

と心の中の声が漏れた。ひとり言恥ずかしいと思っていたら、すぐ横から

「朝からずっとうっせーヨ。」

と眠そうにあくびをする荒北。

「おはよう。」
「ハヨォ。」

いつも通り、席に着けばすぐに寝息が聞こえ、1日が終わっていく。



授業も終わり、今日はまっすぐ家に帰るつもりでいたら、クラスの子に声をかけられ、ホワイトデーのお返し貰えたと喜んでいた。
10分ほど話して、下駄箱で別れ校門に向かって歩いていると、すぐ横からシャッと音が聞こえ名前は驚いた。
見るとサイクルジャージで自転車に乗った荒北がすぐ横にいる。

「コレ、やる。」

差し出されたのは小さな紙袋。中を見ると飴の入った可愛い小瓶が入っていた。
名前は驚いて瞬きの回数が増える。

「あ、りがとう。」

居心地悪そうな荒北は、頭をがしがしとかいて何も言わずに行ってしまった。


「荒北くん、知ってる?お返しに飴って、あなたが好きですって意味なんだよ。…なんて、知らないか。」

名前は紙袋を大切に抱えて持ち帰った。






ホワイトデー数日前。

「靖友、お返し用意したか?」
「あぁ?してねェよ。」
「荒北、それはならんな!」
「うっせー。」
「靖友知ってるか?お返しに渡すお菓子の意味。」
「はぁ?そんなのあんのォ?」
「荒北がそんな事を知ってる訳がないだろ。」
「飴はあなたが好きです。マシュマロはあなたに興味がありませんや嫌いです。クッキーはあなたとは友達で、他にもあるぞ。」
「めんどくせェな。」
「受け取ったのであれば、きちんとお返しをするべきだぞ。聞いておるのか荒北!」
「うっぜ。」
「うざくはないな!」




意味を知ってて渡してるとは思わないんだろうな、ペダルを踏みながら荒北は思った。




2020.04.02


monoGatari