25
春休み、兄は彼女と旅行中である。普段からうるさい兄が居なくなれば、名前ものびのびと遊べると楽しみだった。
そう思い友達に連絡してみたが、部活休みでデートだからとあっさり断られた。仕方ないとひとり近くのショッピングモールをぶらぶらしていると、サイクルショップに目が止まった。
そこには、荒北が乗っている自転車と同じものが展示されていた。
「こんなに細いフレームであんなに早く走るのかぁ。」
荒北の走る姿は、練習中の一瞬しか見た事はない。たまたま帰宅する際に目の前を通ったその一瞬だけだ。
「ん?誰かと思ったら名前ちゃんか。」
後ろから新開に声をかけられた。
「わぁ、偶然だね。」
「珍しい所で会ったな。ひとりか?」
「そう、暇人は私だけみたいで。」
はははっといつもの笑顔を向けてくる。
「新開くん部活は?」
「今日は午前中だけだったんだ。今は買い物ついでにここに寄ったんだ。寿一も一緒だぜ。」
「そうだったんだ。」
「そういや、おめさん明日暇か?」
「暇です。」
「ちょうど良かった。明日靖友誕生日なんだ。だから、誕生日会をやろうと思ってさ。サプライズでな。」
へぇそうなんだと知らないフリをする名前だか、もちろん明日誕生日だというのは知っている。毎年渡せないプレゼントを用意しているなんて言えない。
「名前ちゃんもおいでよ。」
「えっ、むりむり。」
「なんでだ?」
「部活でやるんじゃないの?私関わりないし…。」
「ああ、俺と寿一と尽八で靖友の部屋でやるんだ。だから平気だぞ。」
「待て待て。突然私なんかが行ったら、福富くんと東堂くんも困ると思うよ。」
それなら大丈夫だ、今言うからと福富を呼ぶ。
「どうした、新開。」
「明日靖友の誕生日だけど、名前ちゃんも誘おうかと思って。」
「荒北は喜ぶか?」
「喜ぶんじゃないか?チョコの子だし。」
「そうか。」
名前抜きに話が進んでいく。
「苗字、もし時間あるなら参加してもらえないだろうか。」
福富の圧に押され、思わず頷いてしまう。
この後、お菓子や飲み物を買う予定だと言うので、名前は明日ケーキや食べ物を持っていく事になった。
「明日13時、男子寮前な。」
そう言って新開達と別れた。
「本当に行っていいのかなぁ。…男子寮、入っていいもんなの?」
2020.04.19