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「私はそろそろ。」

くだらない話で盛り上がったり、ゲームで遊んだりとしていれば、あっという間に夕方を過ぎていた。

「今日は、私まで一緒にありがとう。とても楽しかった。じゃぁ、また春休み明けに。」

名前はそう言って立ち上がる。

「荒北、送ってこい。」
「いやいやいや、主役が抜けるなんでダメでしょ。福富くん大丈夫だよ。」
「なに?女子をひとりで帰すなどならんぞ。では、この俺が送ろう。」

東堂が手をあげる。

「いや、俺が送るよ。」

新開も手をあげる。あれっ、この流れはと名前が福富を見る。

「俺が送る。」

まさかの福富まで手をあげ、3人が荒北をみる。荒北は口をへの字に曲げみんなと目を合わせようとしないが、3人もそのまま動かない。名前も口を挟んでいいものか考えてしまう。諦めた荒北が、それはそれは大きなため息をつきながら手だけをあげると、一斉に

「「「どーぞ。」」」

と待っていましたと言うようにお決まりの言葉を揃えた。荒北は、盛大な舌打ちと共に名前の荷物を持って部屋から出てしまう。

「ごめんね、主役お借りします!今日は本当にありがとう。」

名前は慌てて荒北を追いかけた。荒北の後ろに着いて行き、誰にも見つかる事なく男子寮から出る。

「荷物ごめん、持つよ。」
「いいよ、別にィ。」
「いや、今日の主役に持たせられません。」

そう言っていくつかある荷物に手をかける。

「じゃぁ、こっちネ。」

とひとつだけ手渡される。

「頑固者。」
「お前もなァ。」



「今日は楽しかったなぁ。荒北くんも楽しかった?」
「まぁ、いつも通り煩かったけどナ。」
「なんかいいね、男子高校生のお誕生日会。」
「…それだけ聞くと、ちょっとやべェな。」

げっとした顔をして笑う。

名前は朝からずっと頭の隅にあった事を伝えようと決めた。

「荒北くん、少しだけ時間貰ってもいいかなぁ。」
「いいけどォ。」

そう言って、もう誰も居なくなった近くの小さな公園に入りベンチに座った。

「どーした?」

名前は、荒北が持っていたバッグをひとつ受け取る。

「これ、誕生日のプレゼントなの。今年の。」

とリボンで結ばれた袋をひとつ渡す。

「おー、あんがとネー。見ていいのォ?」

頷くと、荒北はリボンを外し袋の中を覗く。

「おぉ、オレここのタオルちょーお気に入りィ。ふわふわがずっと続くんだよなァ。」

手に取ると優しく撫で喜んでいるようだった。

「使わせてもらうわ、これ。」
「でね、実はまだあって…。」
「えぇ?まァだあんの?」
「うん、今年のはさっきのなんだけど…。」

と言って名前はまたひとつ同じような袋を差し出す。

「これは、去年の誕生日に用意してたプレゼント。」

色違いの同じタオルである。

「去年?」
「そう、用意したけど渡せなかったの。それで、こっちは一昨年に用意してたプレゼント。」
「一昨年もかヨ!」
「そう…しかも全部タオルって言うね。」
「すげェな。でも…あんがと。」

お気に入りのタオルが3枚も増えて荒北は喜んでいた。

「…それが、実は…。」
「えっ、まさかァ?」
「そのまさかなんですよね…。」

ひとまわり小さな袋を差し出した。

「中学生だから、ハンドタオルなんだけど…。」

荒北を好きになり、毎年誕生日に用意していたプレゼントをやっと渡す事が出来た。

「はぁーやっと渡せた。自分でもキモいなぁとは自覚してるよ、ははっ」

自虐的に言ってみるが、荒北の顔を見れば優しい笑顔を名前に向けており、ああもう好きが止められない、と感情が高ぶり不思議と涙が溢れそうになり俯く名前の頭にポンと手が乗る。
スイッチを押されたかのように涙と感情が溢れてしまった。
荒北はそんな#名前を#片手でそっと抱き寄せた。

「俺も同じ。」
「な、にが…」
「お前と同じ気持ち。」
「私、あらき、たくんの事、ずっ、ずっと、好きだっ、たんだよ。」
「俺もだよ。」
「だったら、なんで、無視してたの…言ってくれればよかったのに…。」
「うん、そうだよな。でも…言えねーだろ。」
「なんで?」
「自分から関わるなって言っておきながら、かっこ悪いだろ。」
「何それ、ヘタレ。」
「ハッ、…でもほんとヘタレだな。」
「元ヤンだし?」
「そうだな、俺は一度道を逸れた。もしかしたらまた間違える時があるかもわかんねェ。」
「その経験があるから、今の荒北くんがいるんだよ。元ヤンのヘタレでも大好きだよ、ちくしょう。」
「ちくしょうってなんだよ…俺も、好きだよ。」

と言えば、涙でボロボロの名前の顔は綺麗に笑った。




2020.05.29


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