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今日は、14:00にマンション下に荒北が迎えに来ることになっている。
「今日、出かけるのか?」
リビングのソファでテレビを見ていた兄が聞いてきた。
「うん、夕飯は食べてくる。」
「もしかして、デート?」
なんて兄の隣に座って一緒にテレビを見ていた彼女が言うものだから名前は焦ってしまう。
「えっ、なん、なんで?」
「はっ?そうなのか?デートなのか?」
「いや、ちがっくないけど…」
「だって名前ちゃんいつも以上にかわいいんだもん、これはデートでしょ。」
「いつ彼氏出来んだ?同じ学校か?誰だ!」
「うるさいなー誰でもいいでしょ。」
「ちゃんとした男なのか?」
「もーーーほんっとうるさい!」
「まぁまぁ、お兄ちゃんは、可愛い妹が心配なんだよー。そうだ!髪型いつもと変えてみようよ。」
黒髪ストレートの名前の髪を、兄の彼女は、手際よくヘアアイロンで緩く巻き、ハーフアップにした。
「凄い!いつもと違うー!」
「でしょ?せっかくだし、ほんの少しだけメイクしてみる?時間あるなら。」
時計を見れば、14時まであと15分ある。
「うん、でも気合い入れ過ぎで引かれない?」
「なに言ってんの!デートで気合い入れないでどこでいれるっての!しかも初デート!」
「うっ…うん、お願いします。軽めで。」
名前がそう言うと、薄めにおいたアイシャドウとブラウンのアイラインにブラックのマスカラを1度塗り、色付きリップで仕上げた。
「名前ちゃんは、もとがいいから薄い色でも十分なんだよねー。」
「わー!私だけど私じゃない!ありがとう!」
と騒いでいると、メールが鳴った。
『着いた』
「行ってきまーす!」
「待て、迎えに来たのか?俺も行くぞ!」
「はぁ?着いてこないでよ!」
「えー、私も一緒に。」
「ダメ!」
名前は急いで玄関を出て、6階から非常階段を駆け下りる。
下に着くと、オートロックの扉前に荒北がいた。
「お待たせ。」
息切れが激しい名前に
「どうしたんだよ?」
「いや、ちょっと…ね。」
さぁ行こう、ここからすぐにでも離れようと歩き出すも
「なっ、おい!」
「あっ、ごめっ」
離れたいあまりに荒北の手を無意識に握っていた。
慌てて離すと後ろから声がする。
「初々しくて可愛いね。」
「もしかして荒北くんか?」
「えっ?荒北くんって中学の時の?」
「そう。」
ちっと思わず荒北の癖が移ってしまう名前。エレベーターも早かったかと振り向きもせずに、行こうと荒北に声をかけるが、荒北は、ちょっと待てと言い、兄の方へ向かう。
「お久しぶりです。」
「名前と付き合ってんのか?」
「はい。」
「そっか、あいつは何気にアホなところがあって大変だろうけど仲良くしてやってな。」
「はい、今日の帰りはきちんと送るんで。」
「ありがとう、今度うちにも遊びに来いよ。」
「ありがとうございます。」
じゃぁ楽しんでと兄と彼女はマンションに戻った。
「アホ兄でごめん。」
「ハッ、兄ちゃんは心配なんだヨ。」
「やっ…靖友くんも心配?」
「…当たり前ダロ。」
「そっかぁ、やっぱ妹ちゃん達のこと可愛がってるんだね。」
「…そっちか。」
「え?」
「いや、なんでもねー、さてと行くかァ。」
「うん」
どこが居心地悪そうにしている荒北が口を開いた。
「…いつもとォ…。」
「ん?なに?」
そう名前が聞いても荒北はそっぽを向いたまま口を開かない。
「なにかあったの?」
「…アァー、なんかァ、いつもとォー。」
「あっ、髪型?お兄ちゃんの彼女にやってもらったの。初デートなんだからって。」
「ばっ!デェー…。」
「デートじゃないの?」
あーと頭をがしがしと掻きながら
「そーだけどォ…。」
「良かった、私の勘違いかと思っちゃったじゃん。」
「………ゎいいんじゃ…ナァイ…。」
荒北の小さ過ぎる声を名前は聞き逃しそうになった。
「えっ!いまかわいいって言った?うそっ!すっごい嬉しい!」
2020.07.17