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名前は今まであまりレースに行った事がなかった。付き合ってから初めて観に行った時だった。レース後、話しかけてもいいものか分からず、少し離れた場所に立っていると、荒北が名前に気付いたので、手を振りおめでとうと荒北には聞こえないだろう小さな声で言うと、荒北の顔が鬼の形相に変わった。

「オイ、まさか一人で来てんじゃねーよナァ?」
「一人だけど。」
「今すぐ帰れ。」
「なんで?せっかく来たのに…。」
「いー加減気付けヨ。」

それ以来、レースの度に来るなよと言われてしまう。
インターハイは、何を言われようと絶対に行くと名前が言うと、また一人では来るなと言われたので、兄と彼女に頼んで一緒に行く事になった。





インターハイの3日間は、あっという間だった。
3日目、荒北がリタイヤしたと聞いた時は、大きな怪我をしたのではないかと不安で怖かった。係の人に救護所を聞いて急いで向かった。中に入っていいものか分からず、テント前をうろうろとしていたら、ちょうど坊主頭の後輩が出てきたので、荒北の容態を聞いた。

「やす…荒北くんは怪我してるんですか!?」
「怪我はありませんので、大丈夫ですよ。」

そう言ってニコリと笑う彼を見て、名前は心の底からほっとした。

「少しなら中に入っても大丈夫かと思いますが、入りますか?」
「ありがとうございます。でもまだレースが終わってないので…。もし良ければ、これやすと…荒北くんと一緒に飲んで下さい。」

そう言って、名前はスポーツドリンクを3本渡した。

「ありがとうございます。いただきます。荒北さんにもお渡ししますね。」
「お願いします。あなたも、お大事に。失礼します。」

そう言って、名前は少し離れた場所で待っていた兄達の元へと戻った。


泉田がテントに入ると、荒北はベッドの上で体を起こしていた。
「荒北さん、起きてらしたんですね。大丈夫ですか?」
「んー。」
「いま、あっそう言えばお名前聞きそびれてしまいましたが、荒北さんの事を下の名前でお呼びする綺麗な女性が心配していらしてたんですよ。」
「アー…。」
「飲み物を頂きましたが、いま飲まれますか?」
「いや………やっぱ貰うワ。」




2020.11.06


monoGatari