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『夜、名前ちゃんの友達連れて靖友の家行く。』
あれから5日後、新開からそうメールが届いた。
「こちら、うちの会社で人事の仕事してる西園寺さん。」
名前や新開のひとつ後輩になるそうだ。
「何度もお断りしたんですが、新開さんがあまりにもしつこいので。」
「名前ちゃんに言い方似てるだろ。」
はははっと新開は笑った。荒北は居ても立っても居られない気持ちを抑え、部屋へと通した。
「俺もまだ何も聞いてないんだ。名前ちゃんとは連絡とってんだよね?」
「はい。」
「なんで辞めたかも知ってるんだよね?」
「もちろんです。人事部でも辞める事を知っていたのは上司と私だけですが、本当の理由を知っているのは苗字さんの上司と私だけだと思います。」
「名前がどこにいるのか教えて欲しい。その本当の理由ってのも知りたい。」
荒北がそう言うと、西園寺は荒北に視線を移した。
「荒北さんですよね。苗字さんから聞いてます。それを聞いてどうしたいんですか?」
「会いに行きたい。」
「苗字さん、もしかしたら他に男の人がいるかもしれませんよ?」
「…それでも、会いてェ。」
「妊娠してるんじゃないかって噂はどうなんだ?」
新開が真っ直ぐに聞いた。
「妊娠してるから会いたいんですか?してませんよ、妊娠。」
「…本当か?」
「荒北さん、苗字さんは本当に荒北さんの事好きでしたよ。入社してから始めてですよ、普段割と口の悪い苗字さんが、あんな幸せそうに誰かの話をしてる姿を見るなんて。」
だから、と西園寺は話を続ける。
「フラれたって聞いた時、本当に驚きました。顔は笑顔を作ってましたが、震える手を必死に隠してるのが分かりました。荒北さん、苗字さんは妊娠してません。それでも会いたいんですか?」
「会いたい。好きだから、会いてェ。もしアイツにもう他に好きなヤツがいたって…あーもうなんでもいーヨ。とにかく会いてェし、好きだって伝えてェ。」
「もし苗字さんが他の誰かと幸せそうにしてても?」
「そんなのオレには関係ねぇよ。」
ふふっと西園寺が初めて笑った。
「なんで手放しちゃったんですか?苗字さんが言ってましたよ、拗らせ男子って。本当にそうですよね。」
「靖友、言われてんな。」
「マジかよ…。」
新開と西園寺は呆れたように笑い、荒北は情けなさで笑った。
そして西園寺は、手帳を見ながら紙に住所を書いた。
「苗字さんは、2年前に母親が再婚されたそうで、ご実家には住まず、すぐ近くのアパートにひとりで住んでいます。仕事は、短時間バイトをしているそうです。」
そう言って渡された紙を見た。
「それじゃぁ、私はこれで失礼します。」
西園寺は立ち上がり玄関で靴を履くと、荒北をしっかり見て言った。
「苗字さん、5ヶ月に入ったところです。」
「えっ…。」
「しっかりとした気持ちで迎えに行ってあげて下さい。」
そう言い西園寺は荒北の家から出た。
「5ヶ月…。靖友、すぐ行くのか?」
「すぐにでも行きてェよ。でもオレもヤンなきゃいけねー事ある。」
「そっか。分かったよ。俺は、西園寺さん送ってくるから。」
「新開!…あんがとナ。」
「ははっ、靖友!今度こそ男になれ!」
そう言って新開も急いで荒北の家を出て西園寺を追いかけた。
2020.07.31