05
それからの二人は、2週間に1回仕事帰りにご飯を食べるようになり、2ヶ月を過ぎた頃には1週間に1回になり、それからさらに2ヶ月過ぎた頃には時々休日に出かけるようにまで距離が近付いた。
「ごめん、帰り際に仕事渡されちゃって。」
「ん、イーヨ。オレも仕事片付けられたし。」
今日も仕事帰りに待ち合わせをし、これから食事の予定である。
「そーいや、また断ったんか?」
「隼人くん?」
「そぉー。アイツ、オレに仲間はずれにすんなーって長文メール送ってきやがったヨ。」
時々新開から俺もたまには混ぜてくれと言われるのだが、名前はせっかく荒北と二人の時間なのだから、邪魔されてたまるかといつも逃げ帰る。
「あはは、ごめんね。じゃぁ今度は連れてくるよ。」
「ハッ、たまには入れてやっか。」
「今日はどこにする?」
「アー、最初に行ったあのイタリアンの店行かねェ?」
「いいね、美味しかったからまた行きたかったんだ。」
いつも通り、1週間の出来事を話したりしているとあっという間に時間は過ぎていく。
「そろそろ、出るかァ。」
いつもなら、もう少しゆっくりしているのだが、今日は少し早めに店を出た。
「この後用事あったの?」
「んや、ねーケド。たまにはプラプラ歩くのもいいんじゃナァイ?」
そう言いながら、荒北は人の多い駅付近から静かな場所へと向かって歩いていく。
「夜になると少し冷えてくるね。」
「夏も終わったからなァ。」
頭を上げ空を眺める名前につられ、荒北も真っ暗な空へと顔を向けた。しばらく二人は黙ったまま、ゆっくりとただ歩く。
「あのさァ。」
荒北は名前を見てからまた顔を前に向けた。
「オレ、やっぱ女に対しての不信感っつうのが、完全になくなんねェんだわ。」
「うん。」
「どっかでオレは利用されてるんじゃねェかって。」
「そっかぁ。」
荒北は立ち止まると名前をしっかりと見る。
「名前がオレに好意を持ってくれてるっつうのはなんとなく分かったし、正直オレもお前と一緒にいるのは楽しい。」
「そう思ってもらえて良かった。」
「お前が他の男とオレみたいにメシ行ったりしてるかとか考えるとイラつく。でもそれが好きだからなのかは分かんねェ。」
「そんな深く考えなくてもいいと思うんだけどな。拗らせ男子だね。」
「ハッ!それな。」
「もし靖友くんがそう思ってる女性が私だけなら、私は別に付き合うって形には拘らなくてもいいよ。」
「そう言うんじゃねぇーかと思った。でもそれじゃダメなんだよ。」
そんな中途半端な状態で名前を縛り付ける事は出来るはずがない。
「じゃぁ、期限決める?」
まさかの名前からの提案だった。
「期限?」
「そう、3ヶ月じゃ短いから…半年くらい?その間、今までみたいにご飯食べたり、あと休みの日もいっぱい出掛けたりしてみようよ。それでも私に対して、好きか分からないって言うなら、それはきっと恋愛としては見れないって事なんだと思うんだ。」
「お前はそれでいいのかヨ?」
「いいから言ってるんだけど。ダメでも大丈夫。靖友くんが一生懸命考えて出した答えなら、私はきっと諦めがつくと思うんだよね。」
荒北は情けないと思いつつも、いま名前と関係をすっぱりと切る気持ちにもなれず、名前の提案を受ける事にした。
2020.01.20