13:弟と宿



「不死川さん。私のお供など申し訳ありません」

すぐに出立の準備をし、二人で出入り口で待ち合わせた。

「い、いや、その迷惑かけてるのはこちらですし」

なぜか、先ほどはそんなことなかったのに、不死川さんは顔が真っ赤で視線が合わない。

「不死川さん?」

「あーーーすみません。焦ってて忘れてたんですが俺、女性が苦手で!」

あんまり目を見て話せなくって、と焦っていう彼はかわいらしい。

「そうなんですね。それなのに一緒に来ていただいて申し訳ないです」

「いやいやこちらこそ」

謝っていて話が進まないので、何となく目があって二人で笑った。

「では早く出立しましょうか。多分私の足じゃ時間がかかると思うので」

「じゃぁ俺が背負って行ってやろうかァ」

別の声が聞こえて不死川さんと二人で振り返った。

「実弥さん!」「兄貴!」

声がかぶって思わず二人で顔を見合わせた。
そこには青筋の浮かんでいる実弥さんが立っていた。

「え?兄貴?」

「さ、実弥さん・・て・・」

不死川さんとお互い動揺の言葉がでるものの、言葉に詰まる。

「ほら、とっとと行くぞ」

それでなくてもお前足が遅えのによォ、と私の荷物をひったくりながら実弥さんは言う。
いや、柱がついてくるような任務じゃないし。
そしてなぜ今日のことを知っている。
やだ、柱の情報網こわい。

「一人じゃ不安だろうがァ」

いや、不死川さんもいるし。
ちらりと不死川さんを見ると彼も知らなかったようで、動揺してるみたいだった。

「あ、兄貴・・!」

不死川さんが呼びかけると、また実弥さんは青筋たてた顔で彼を睨みつける。
最初に会った頃も実弥さんのこと怖いって思っていたけど、その時とは比にならないくらいの表情をしていた。
こちらにまで緊張感が伝わってきて、空気だけで痺れそう。

「俺に兄弟はいねェ」

言葉を聞いて不死川さんは肩を震わせて視線を落とした。
その様子が気になりつつも、先を歩いていく実弥さんの後をあわてて私は追いかけた。

-------------------------------------------

道中、会話がなくて地獄だった。
私はいつも薬園で一人だから、誰かといたら話したいんだけど。
なんだか不死川さんはお葬式みたいになって一言も話さないし。
実弥さんは休憩するかとか、団子くうかとか必要最小限しか話さないし。
こちらから話題を振るのもはばかられるしーーー。


何となく沈黙のまま三人の足音だけが響く。

そんなこんなで日が落ちる前に亜月山の麓の村までたどり着いた。
藤の家の家紋がついた宿を見つけ、門をたたく。
今日はここに泊めていただき、明日の朝、山に入って薬草をとって帰る予定だ。

「まぁまぁ風柱様方。これはこれはようこそお越しくださいました」

門を通され宿の入り口で出迎えてくれた旦那様が微笑んだ。

「急にすまねェが今晩泊めてほしい」

実弥さんがいうと、旦那様は少々困った顔になった。

「それは・・・もちろんなのですが。何卒部屋が2つしかあいておりません」

「え!?」

それは困った。通常でいけば一番下っ端の私が野宿でもするべきなのだが、私、野犬に食べられる自信があります。
せめて土間とかどこか借りられないかなと考えていると、

「そうか、なら2つでいい。無理を言って申し訳ない」

と実弥さんが承諾してしまった。

「実弥さん、私外じゃなくて、せめて土間に寝てもいいですか?」

そう聞くと、実弥さんは一瞬驚いた顔をしたが、その後ハッと鼻で笑った。
あ、土間も私にはもったいない感じ?

「おい、不死川ァ。お前一つの部屋使え」

そういって旦那さまより受けとった部屋の錠を不死川さんに投げ渡す。
そして私に向き直っていった。

「お前は俺と泊まるんだよ」


prev novel top next

MONOMO